「採用の投稿は、人事と広報のどちらが作るんですか」。インスタを採用に使いたいという相談を受けると、最初にこの話になります。
先に結論を書きます。採用にインスタを活用するとき、最初に決めるのは投稿の中身ではなく、役割の分け方です。人事は募集の情報と、社員に協力を頼める立場を持っています。広報はアカウントの権限と、会社としてどう出すかの基準を持っています。どちらが何を用意し、どちらが確かめるのかを決めないまま始めると、両方が相手を待つことになり、投稿が止まります。この記事では、アカウントの分け方、人事と広報の分担、社員が写る投稿の同意、応募者からの連絡への対応、投稿から応募までの道すじ、成功事例の見方を順に書きます。
採用インスタは、誰が出すかを決めないと止まります
採用インスタ(採用のために、インスタグラムで職場や仕事の様子を発信すること)は、始めるときには勢いがあります。止まりやすいのは、最初の募集が落ち着いた後です。
人事の担当者は、面接や入社の手続きが重なる時期に手が離せなくなります。広報の担当者は、採用の素材が届かなければ投稿を作れません。どちらも怠けているわけではなく、相手が動くのを待っている状態です。そのまま募集のない時期に入ると、アカウントの更新が止まります。求職者が応募の前にアカウントを見に来たとき、最後の投稿が何か月も前だと、今も人を探している会社には見えません。
これを避けるには、分担を紙に書いておくことです。「人事がやる」「広報がやる」ではなく、担当者の名前を書きます。異動や退職で担当が代わったときも、その紙を書き換えれば引き継げます。担当が代わるときに渡すものはSNS担当者の引き継ぎに整理しました。
会社のアカウントで出すか、採用専用のアカウントを作るか
次に決めるのは、どのアカウントで出すかです。選び方の基準は三つあります。
一つ目は、見せたい相手です。顧客と求職者が重なっている会社なら、会社のアカウントで出しても違和感はありません。顧客向けの商品紹介の中に採用の投稿が混ざると読みにくくなる会社なら、分けることを考えます。
二つ目は、続けられる本数です。専用のアカウントを作ると、フォロワーを一から集めることになります。更新が止まった専用アカウントは、会社のアカウントで採用の投稿が少ない状態よりも、止まっていることが目立ちます。
三つ目は、権限を誰が持つかです。専用のアカウントを人事が持つなら、ログインの情報とパスワードを人事の個人だけが知っている状態にしないでください。
迷ったら、会社のアカウントで始めるのが無難です。採用の投稿は毎回同じ型で作り、プロフィールのハイライトに採用の束を一つ作っておくと、求職者はそこだけを見れば済みます。ハイライトの並べ方はインスタのハイライトの作り方にまとめました。
人事が用意するもの、広報が確かめるもの
分担は、次のように分けると重なりが少なくなります。
| 項目 | 人事 | 広報 |
|---|---|---|
| 募集の職種・時期・選考の流れ | 用意する | 言い回しを確かめる |
| 社員の声や一日の流れの素材 | 社員に頼んで集める | 写真と文を出してよいか確かめる |
| 投稿文 | 下書きする | 会社の出し方と合っているか確かめる |
| 投稿する操作 | ― | 行う |
| 応募者からのDMとコメント | 答える | 荒れたときに加わる |
表の中で抜けやすいのは、募集の条件の扱いです。投稿文に書く勤務地や勤務時間は、求人票と同じ内容にしてください。募集を締め切ったら、その投稿の文を書き換えて締め切ったことを書くか、条件の部分を消します。古い条件が書かれた投稿は、後から見た求職者には今の条件に見えます。
出す前に二人目が読むという決まりは、採用の投稿でも同じです。社内の決まりの作り方は企業のSNS炎上対策で書きました。
社員が写る投稿は、同意と、辞めたときの扱いを先に決めます
採用の投稿でいちばん時間がかかるのは、社員に出てもらう部分です。
撮影で職場に伺うと、写ることを遠慮する社員の方がいます。顔を出したくない理由は人それぞれで、撮影の場で聞き出すものではありません。撮影の前に、顔を出すか、名前を出すか、所属を出すかを、本人に一つずつ選んでもらってください。選んだ内容は、口頭で済ませずにメールなどで残します。
同時に決めておくのが、その社員が辞めたときの扱いです。投稿を残すのか、消すのか、その時点で本人に聞くのか。同意をもらう時点で決めておかないと、退職の手続きの最中にこの話を切り出すことになります。
写り込みにも気をつけてください。社員の後ろにあるパソコンの画面やホワイトボードに、取引先の名前が写っていることがあります。業種ごとの許可の取り方は業種別のインスタ成功事例を自社に移す手順にまとめました。
応募者からのDMとコメントには、人事が答えます
採用の投稿を出すと、DM(ダイレクトメッセージ)やコメントで質問が届くようになります。答えるのは人事です。広報が推測で条件を答えると、求人票と違う内容を伝えてしまうおそれがあります。
DMで答えてよい範囲も決めておきます。職場の雰囲気や仕事の中身についての質問には答えてかまいません。選考の結果や、個人ごとの給与などの条件は、DMでは答えずに応募の窓口へ案内してください。インスタのDMは、アカウントにログインできる人なら誰でも読めるため、選考の記録を置く場所には向いていません。
休みの日にDMが届いたときに誰が見るのか、何日以内に返すのかも決めておきます。返事が来ないまま数日たつと、応募を考えていた人の気持ちは、その間に他の会社へ移ることがあります。
投稿から応募の窓口までの道すじを、プロフィールに作っておきます
投稿を見て興味を持った求職者は、次にプロフィールを開き、そこから応募の窓口を探します。途中で行き先が分からなくなると、投稿がどれだけ見られても応募にはつながりません。
プロフィールで整えておくのは三つです。自己紹介の文には、採用の情報も出しているアカウントであることと、募集している職種を書きます。募集を締め切ったら、この文も投稿と同じように書き換えます。リンク欄には、応募の窓口か採用のページを入れます。会社のトップページを入れると、求職者はそこから採用の情報をもう一度探すことになります。ハイライトの採用の束には、仕事の中身、働いている人、選考の流れの投稿を入れておきます。
この道すじは、段階ごとに数えられます。投稿を見た人の数は、投稿ごとのインサイトに出ます。インサイトの「プロフィールのアクティビティ」には、プロフィールへのアクセスと、リンク欄を押した数(ウェブサイトのタップ数)が並びます。項目の名前は、アプリの版や表示言語によって変わることがあります。応募の数はインスタの中には出ないので、応募の窓口の側で数えます。
図1 投稿から応募までの段階と、それぞれを数える場所(模式図)
月ごとにこれらの数を並べると、どの段階で人が減っているかが分かります。プロフィールへのアクセスはあるのにリンク欄を押す人が少ないなら、直すのはプロフィールの文とリンク欄です。数字の出し方はインスタのプロフィールアクセス率に書きました。
ただし、インスタを見たあとに求人サイトなど別の入り口から応募する人もいます。そのため、リンク欄を押した数と応募の数はそのままではつながりません。この抜けは、次の節で書く面接での聞き取りで補います。
採用インスタの成功事例は、応募者の声で確かめます
「採用 インスタ 成功事例」で調べると、採用アカウントの事例をまとめた記事が出てきます。ただ、事例のアカウントのフォロワーやいいねの数を見ても、そのアカウントを見て応募した人が何人いたかは分かりません。
他社の事例を見るなら、数字ではなく投稿の並び方を見てください。仕事の中身、働いている人、選考の流れの三つがそろっていて、求職者が知りたい順に並んでいるかどうかです。事例の読み方はインスタの企業事例の見方に整理しました。
自社の成果は、応募者に聞いて確かめます。面接の最後に「応募の前にインスタを見ましたか。覚えている投稿はありますか」と聞き、答えを記録してください。数か月分がたまると、応募者の記憶に残っていた投稿の型が分かります。フォロワーの数より、この記録のほうが次に作る投稿を決める材料になります。
次の採用の打ち合わせでは、分担の表を印刷して持っていき、項目ごとに人事と広報の担当者の名前を書き入れるところから始めてください。