「BtoBでインスタをやる意味があるのか、社内で説明できません」。法人向けの商材を扱う会社の担当者から、こういう相談を受けることがあります。結論から言うと、BtoB企業のインスタ運用は、投稿を見た人がその場で問い合わせてくる場所として設計すると、たいてい続かなくなります。法人の購買は、見てから決まるまでの時間が長く、決める人も一人ではありません。投稿と受注の間に距離がある以上、その距離を埋める役割を先に決めておく必要があります。この記事では、BtoBでの見られ方、向く用途と向かない用途、運用を始める前に決めること、事例を出せない前提での投稿の作り方、成果の測り方の順に整理します。

BtoBのインスタは、その場で売る場所として設計しない

法人向けの商材では、投稿を見た人が「いいですね」と思っても、その場で発注は決まりません。予算の期があり、比較検討があり、社内で通す手続きがあります。個人が自分の判断で買える商材とは、決まるまでの経路がそもそも違います。

この前提を飛ばしてアカウントを始めると、投稿を続けても問い合わせが増えないという結果になり、数か月で更新が止まります。止まる原因は投稿の中身ではなく、最初に置いた期待の位置にあります。

BtoBでInstagramに持たせられるのは、購買の手前にある部分です。名前を知っている状態を作ること、比較検討の場面で思い出してもらうこと、商談の前後で「どういう会社なのか」を確かめる場所になること。どれも受注そのものではありませんが、受注までの経路の一部です。ここを役割として言語化しておくと、投稿ごとの判断も、社内への説明もぶれにくくなります。

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誰が見ているか。発注検討層以外も同じアカウントに集まる

BtoBの企業アカウントを見ている人は、発注を検討している担当者だけではありません。実際には、性質の違う人たちが同じアカウントに集まります。

  • 発注を検討している担当者:比較の途中で、会社の様子を確かめに来る
  • すでに取引のある顧客:担当者が更新を見ていて、社内で話題に出ることがある
  • 就職や転職を考えている人:採用サイトより先に、働いている様子を見に来る
  • 同業や関係先:情報収集として見ている

この四つは、見たい情報が違います。発注検討層は仕事の進め方や考え方を見ていますが、採用目的で見ている人は職場の雰囲気や人を見ています。どちらにも向けて投稿すること自体は問題ありませんが、「誰向けの投稿なのか」を意識しないまま混ぜると、どの層にも刺さらない当たり障りのない更新になっていきます。

投稿を作る前に、この一本はどの層に向けたものかを決めておくと、内容の粒度が決まります。全員に向けて書こうとしたときが、いちばん薄くなります。

図1 一つのアカウントに集まる四つの層と、見ているもの

一つのアカウント=一つのフォロワー数 発注の検討 仕事の進め方 既存の取引先 更新の様子 就職・転職 働く人と職場 同業・関係先 情報収集 投稿ごとに、どの層へ向けるかを決めます
上の箱が一つしかないので、増減も一つの数字でしか出てきません。下のどの箱が増えたのかは、フォロワー数を見ても分かりません。

向く用途と、期待しない方がいい用途

BtoBのInstagramで機能しやすい用途と、そうでない用途は、はっきり分かれます。

向く用途 期待しない方がいい用途
社名や事業内容を知ってもらう 投稿から直接、発注につながる
商談前後に会社を確認する場所になる 短期間で問い合わせ数を増やす
採用の入り口として使う 価格や仕様の比較検討をここで完結させる
既存の取引先との接点を保つ 決裁者に直接届かせる

商談の場で「投稿を見ました」と言われることは、受託の現場でも実際にあります。営業資料を出す前に、相手がすでにアカウントを見ていた、という順番になっている場合もあります。このとき、Instagramは問い合わせを生む装置としてではなく、こちらの説明を裏付ける材料として働いています。

一方で、決裁者本人がInstagramを日常的に見ているとは限りません。届く相手は多くの場合、実務を担当している人です。決裁者に直接届かせようとして投稿の内容を寄せると、実際に見ている担当者にとっては遠い話になっていきます。

運用を始める前に決める4つのこと

役割と向ける層が見えたら、投稿を作り始める前に、次の4つを決めておきます。BtoBの企業アカウントでは、公開前に広報や営業、内容によっては法務の確認が入ります。この段取りを決めないまま始めると、一本ごとに「誰に見せればいいか」で手が止まり、更新の間隔が空いていきます。

  1. 主な役割を一つに絞る。名前を知ってもらうこと、商談前後の確認、採用、既存の取引先との接点のうち、どれを主にするかを決めます。どれも大事な場合でも、主を一つにしておくと、投稿の優先順位と、後で見る数字が決まります。
  2. 採用用のアカウントを分けるかを決める。採用の比重が大きい会社には、事業用と採用用でアカウントを分けているところもあります。分けると投稿ごとの向け先ははっきりしますが、更新する手間は二つ分になります。人手と時間が限られているうちは一つのアカウントで始め、投稿ごとにどの層向けかを決める方が、更新を続けやすくなります。
  3. プロフィールを整える。プロフィール文には、何をしている会社で、誰の何を手伝っているのかを書きます。BtoBの会社は社名だけでは事業内容が伝わりにくいので、商談の前に確かめに来た人は、まずここを読みます。プロフィールのリンク先は、主な役割に合わせて、サービスの説明ページ、会社概要、採用ページのどれか一つにします。
  4. 社内確認の流れと本数を決める。誰が内容を確認するか、守秘に触れていないかを誰が見るか、確認に何日かかるかを決めます。確認に数日かかるなら、公開日から逆算して投稿を作る日を決めます。そのうえで、確認まで含めて無理なく出せる本数を月単位で決めます。本数の決め方はインスタ投稿頻度の決め方にまとめました。

図2 公開日から逆算して、作り始める日を決める

作る 社内で確認 公開 公開日を先に置いて、左へ戻って決めます 確認に何日かかるかを数えてから、作り始める日を置きます
手前から順に積み上げると、確認が終わらないまま公開日が来ます。

事例を出せない前提で、何を投稿するか

BtoBで最初に詰まるのが、投稿する材料です。取引先の名前を出せない、納品物を公開できない、業務の中身に守秘義務がある。この条件が重なると、「載せられるものがない」という結論になりがちです。

ただし、出せないのは固有名詞と成果物であって、仕事の進め方そのものではありません。実際に投稿の材料になるのは、次のようなものです。

  • 発注前によく聞かれる質問と、それに対する自社の答え
  • 進め方の型。打ち合わせから納品までに何をどの順でやるか
  • 使っている道具や環境。作業している場所の様子
  • 業界でよくある誤解と、実務での実際
  • 人。誰がどの工程を担当しているか

いずれも、固有名詞を出さずに書けます。守秘に触れる部分は「ある案件で」と抽象化すれば済みます。事例が出せないことを理由に更新が止まっているアカウントは、載せられないものを載せようとしている場合がほとんどです。

もう一つ、BtoBでは投稿の見た目より、書いてある内容の具体性が読まれ方を左右します。写真の質を上げることに時間をかけるより、一本あたりに書く情報の解像度を上げる方が、見ている担当者にとっての価値は上がります。同じ材料を動画で見せるか、複数枚の画像で読ませるかの選び方は、リールとカルーセルの使い分けで整理しています。

成果を、問い合わせ数だけで測らない

BtoBのInstagramを問い合わせ件数だけで評価すると、ほぼ確実に「成果が出ていない」という結論になります。購買までの距離が長い以上、投稿と問い合わせを直接ひもづけること自体に無理があります。

代わりに見るのは、購買の手前で起きている変化です。

  • プロフィールへ進んだ人の割合。投稿を見た人が、会社そのものに関心を持ったかどうかが表れます(計算のしかたはプロフィールアクセス率を参照)
  • 保存された数。後で見返す価値があると判断されたかどうかの手がかりになります(保存率の計算式と保存数との使い分け)
  • 商談の場で、投稿やアカウントに言及されたかどうか。定性的ですが、届いているかを確かめる直接の材料です
  • 採用の応募者が、応募前にアカウントを見ていたかどうか

このうち商談での言及は数字になりませんが、記録として残しておく価値があります。営業担当に「アカウントの話が出たら共有してほしい」と伝えておくだけで、四半期ごとに振り返る材料が溜まります。

指標を決めるときは、何を主指標にするかを最初に一つだけ決めて、残りは補助として扱う方が判断しやすくなります。指標を複数並べたまま運用すると、どの数字が動いたときに投稿の方針を変えるのかが決まりません。

まず、自社のアカウントを見ている人が発注検討層・既存顧客・求職者のどれに寄っているかを、フォロワーの内訳と最近の反応から確かめてください。そのうえで、直近3か月の投稿がその層に向いていたかを見直すところから始まります。