「先月と比べてどうですか」と聞かれた担当者が、画面を三つ開きました。インスタグラムのインサイト、Xのアナリティクス、YouTubeのスタジオです。三つとも数字は出ていました。ただ、そのまま横に並べて比べられる数字は、その中にありませんでした。
SNSの効果測定とは、出した投稿が目的に近づいたかどうかを、決めた数字で確かめる作業です。先に結論を書きます。見る指標は認知・反応・行動の三段に分かれます。そして作業の半分は、数字を取る前にあります。どの段を見るかを決め、期間と定義と取る日を固定してから測ってください。
効果測定で見る指標は、認知・反応・行動の三段に分かれます
指標の名前を一覧で覚える必要はありません。SNSの画面に出てくる数字は、どれも次の三段のどこかに入ります。
| 段 | 見る数字 | 分かること |
|---|---|---|
| 認知 | 届いた人の数、表示された回数 | 何人に、何回届いたか |
| 反応 | いいね、保存、コメント、シェア、反応の割合 | 届いた人が動いたか |
| 行動 | プロフィールへの移動、リンクを押した数 | 投稿から先へ進んだか |
この三段にフォロワー数を入れていません。フォロワー数は積み上がった結果の数字で、今月出した投稿が届いたかどうかは表さないためです。先月と今月を比べるなら、反応の割合やプロフィールへの移動のほうが先に動きます。
三段のうち、今どこを増やしたいのかを一つ決めてください。三つを同時に追うと、下がったときにどこを直せばよいのかが決まりません。どの数字を目標に置くかの決め方は、SNSのKPIとはに書きました。
図1 効果測定で見る三段と、SNSの数字で追える範囲
追う数字を決めるところは、比較的すぐに終わります。手が止まるのはその次です。同じ「届いた数」でも、SNSによって何を数えているかが違います。同じSNSの中でも、見る画面の場所によって集計の期間が違います。さらに、取る人が変わると、去年の数字と今年の数字が別のものを指すようになります。
受託で入った会社で、月次の報告に載っている数字の定義が、前の担当者と今の担当者で入れ替わっていたことがありました。表の見た目は同じで、列の名前も同じでした。数字だけが、途中の月から別のものを指していました。比べていたつもりの前年同月は、比べられていませんでした。
効果測定の方法を決めるというのは、指標を選ぶことと、その指標の数え方を書き残すことの二つです。後者を省くと、記録は残っても比較ができません。
三段の数字は、SNSごとの分析画面とサイトの解析から取ります
数え方を書き残すときは、その数字をどの画面から取ったかも一緒に書いてください。同じ名前の数字でも、取った画面が違えば中身が変わります。
| 取る場所 | 開き方 | 取れる段 |
|---|---|---|
| インスタグラムの「インサイト」 | アカウント全体は概要の画面、投稿ごとは各投稿の「インサイトを表示」 | 認知・反応・行動 |
| YouTube Studioの「アナリティクス」 | チャンネル全体は左のメニューの「アナリティクス」、動画ごとは「コンテンツ」から動画を選んでアナリティクスのアイコン | 認知・反応 |
| サイトのGoogleアナリティクス4 | 「集客」の「トラフィック獲得」 | 行動(SNSからサイトに来た人数と、その先の動き) |
インスタグラムのインサイトは、画面上部で過去90日以内の期間を選べます(Instagramヘルプセンター)。90日より前の数字は画面から選べないので、月に一度、決めた日に表へ写しておく必要があります。開き方の手順はインスタのインサイトとはに図で載せました。YouTubeの開き方はYouTubeヘルプの記載に合わせています。
投稿からサイトへ来た人を数えるときに要る、リンクに付ける目印の書き方は、このあとの「SNSの外で起きた行動」の節に載せました。
SNSをまたいで並べる前に、数字の定義をそろえます
複数のSNSを運用していると、月次の資料で横に並べたくなります。並べる前に、次の三つを確認してください。
一つめは、その数字が人の数か、回数かです。届いた人の数と、表示された回数は別の数字です。同じ人が三回見れば、人の数は一、回数は三になります。名前が似ているので、片方だけを見て増えたと判断すると、実際には同じ人が繰り返し見ているだけということが起こります。この二つの違いはリーチとインプレッションの違いに整理しました。
二つめは、集計の期間です。SNSごとに、投稿してから何日分を数えるかの扱いが違います。月末に出した投稿は、月内の数字だけを見ると必ず小さく出ます。締め日をそろえないまま並べると、投稿した日が遅い月ほど成績が悪く見えます。
三つめは、動画の再生をどこから一と数えるかです。数秒見た時点で一と数えるSNSもあれば、一定の割合まで見た時点で一と数えるSNSもあります。再生数だけを横に並べても、同じものを比べたことにはなりません。
そろえられない数字は、無理に同じ表へ入れないでください。SNSごとに表を分け、共通で見るのは「出した本数」と「その月に問い合わせが何件来たか」のような、定義が動かないものに絞るほうが読めます。
週に見る数字と、月に見る数字を分けます
毎日数字を見ていると、上がった下がったの話だけで時間が終わります。見る間隔を二つに分けてください。
週に見るのは、手を動かすための数字です。出した本数が予定どおりか、公開直後の伸び方が普段と違わないか、保存やコメントの付き方が特定の投稿だけ極端でないか。ここで見つけたいのは、来週の投稿を変えるかどうかの材料です。
月に見るのは、方針を決めるための数字です。届いた数、反応の割合、プロフィールへの移動、そこから外のページへ進んだ数。月まで待つのは、一本ごとの当たり外れをならすためです。一本の結果で型を変えると、変えた理由が後から分からなくなります。月の資料の形はインスタのレポートの作り方にまとめました。
図2 週に見る数字と月に見る数字は、同じ一か月の上に重なっています
この二つを同じ会議で同じ資料を使って話すと、週の話が月の判断に混ざります。資料そのものを分けておくと、話も混ざりません。
SNSの外で起きた行動は、SNSの中の数字では追えません
SNSの画面で分かるのは、そのSNSの中で起きたことだけです。投稿を見た人が、後日に社名で検索して、別の日にサイトから問い合わせた場合、その動きはSNSの数字に出ません。
追えるところと追えないところを、先に線引きしておいてください。追えるのは、プロフィールのリンクを押した数と、その先のページが見られた数です。リンクに目印の文字列を付けておくと、サイト側の解析でSNSから来た人として分けて数えられます。
この目印をUTMパラメータと呼びます。URLの後ろに「?」を付け、どこから来たか(utm_source)、どの種類の経路か(utm_medium)、どの企画か(utm_campaign)の三つを書き足したものです。たとえば utm_source=instagram、utm_medium=social、utm_campaign=2026-09 のように書きます。Googleアナリティクスのヘルプは、この三つをどの場合も付けるよう案内しています(アナリティクス ヘルプ)。付けたリンクから来た人は、Googleアナリティクス4の「集客」の「トラフィック獲得」に、参照元とメディアの組み合わせとして出ます。
図3 プロフィールに置くリンクに付ける目印(UTMパラメータ)の書き方
値の書き方は自社で決めてかまいません。ただし、一度決めた書き方を月ごとに変えないでください。ある月は「instagram」、次の月は「ig」と書くと、同じインスタグラムから来た人が二つの行に分かれて出ます。数字の定義をそろえる話と同じで、決めた書き方は数え方のメモに一緒に残しておきます。
追えないのは、見てから時間が空いた行動と、SNSを見た人が別の入り口から来た場合です。ここは数字で追わず、問い合わせフォームに「どこで知りましたか」の項目を置いて、答えを集めるほうが早いです。回答は全員分そろいませんが、SNSの数字と突き合わせる材料になります。
SNS経由の問い合わせがゼロだと報告される会社で、フォームに知った経路の欄が無いことがあります。ゼロなのではなく、記録していないだけということが起こります。
数字が下がったとき、切り分ける順番を決めておきます
先月より下がったという報告が来たときに、投稿の中身の話から始めると原因が絞れません。本数、認知、反応、行動の順に、手前から見てください。
- 出した本数は先月と同じか。本数が減っていれば、まずそこが原因です
- 一本あたりの届いた数はどうか。本数が同じで届いた数が減っているなら、届き方の問題です
- 届いた数に対する反応の割合はどうか。届いてはいるが反応が減っているなら、中身の問題です
- 反応はあるがプロフィールへ移っていないなら、投稿文と冒頭のつかみの問題です
図4 下がったときに見る順番
上から順に見ると、中身を疑う前に本数と届き方で説明が付くことが多くあります。順番を決めておくと、担当者が毎回違う場所から原因を探さずに済みます。数字を取る道具をどこまで足すかは、インスタの分析方法に書きました。
最初の一か月で決めておくこと
効果測定の方法を作るときに、最初の一か月でやることは四つです。認知・反応・行動のどの段を増やしたいかを決め、追う数字を三つまでに絞る。その数字の数え方を一文ずつ書いて社内で共有する。数字を取る日を月内の固定日に決める。SNSの外で追えない部分を、フォームの設問で拾う形にする。
この四つが決まると、翌月からは同じ手順の繰り返しになります。数字を取る作業が短くなった分は、投稿の中身を考える時間に回してください。まずは今月の資料を開いて、載っている数字の一つを選び、それが人の数か回数かを確かめるところから始めてください。