「リーチは伸びているのに、インプレッションはほぼ横ばいです」。月次レポートを前に、担当者からこう聞かれることがあります。
インプレッションとリーチの違いは、数える対象にあります。リーチ数は投稿を見た人の数で、インプレッション数は投稿が表示された回数の合計です。同じ人が3回見た投稿は、リーチ数では1、インプレッション数では3になります。混同したまま数字を追うと、判断を誤ります。
リーチとインプレッションの違いは、数える対象にある
リーチは、その投稿を実際に見たユニークアカウントの数です。同じ人が同じ投稿を3回見ても、リーチとしては1人と数えます。日本語表示では「到達数」と書かれることがあり、リーチ数と呼ぶ場合も同じものを指します。
インプレッションは、投稿が表示された回数の合計です。同じ人が3回見れば、3回として数えます。フィードで一度見て、ストーリーズでもう一度見て、検索結果でさらに見る。こうした重複も、すべてインプレッションには積み上がります。日本語表示では「表示回数」と書かれ、インプレッション数と呼ぶ場合も同じものを指します。
リーチ数とインプレッション数の違いは、同じ人の重複を数えるかどうかの一点です。そのため、インプレッション数がリーチ数を下回ることはなく、必ず同じか大きくなります。リーチは「何人に届いたか」を、インプレッションは「何回表示されたか」を表します。
SNS側がこの二つを別々に用意している理由も単純で、「届いた人数」と「接触の量」は、運用上まったく別の意味を持つ数字だからです。片方だけでは、投稿がどう受け取られたかの半分しか分かりません。
二つの数字の関係が教えてくれること
インプレッションをリーチで割ると、1人あたり平均で何回その投稿が表示されたかが分かります。これはフリークエンシー(接触頻度)と呼ばれる考え方で、広告運用の分野では以前から使われてきた指標です。
フリークエンシーが1に近ければ、ほとんどの人が一度だけ見て終わっています。数値が大きくなるほど、同じ人に繰り返し表示されていることになります。リーチだけを見ていると、この繰り返し具合は見えません。インプレッションと合わせて初めて、投稿がどう届いているかの解像度が上がります。
| フリークエンシーの傾向 | 起きていること | 確認したいこと |
|---|---|---|
| 1に近い | ほぼ一度きりの接触が中心 | 新しい層への到達が広がっているか |
| 高い | 同じ人に繰り返し表示されている | 表示が偏っていないか、飽きられていないか |
どちらが良い悪いという話ではありません。認知を広げたい局面なのか、記憶に残したい局面なのかによって、望ましい傾向は変わります。
混同すると起きる判断ミス
リーチが伸びていることを、そのまま「新しい人に届いている」と受け取ってしまうのは、よくある誤解です。実際には、既存のフォロワーに同じ投稿が繰り返し表示されているだけで、リーチの母数自体はほとんど増えていない場合があります。
逆に、インプレッションだけを見て「反応が伸びている」と判断するのも危険です。表示回数が増えても、それが新規層への到達によるものか、既存層への繰り返し表示によるものかは、インプレッションの数字だけでは分かりません。
もう一つ起きやすいのが、アカウント全体のリーチと、投稿単位のリーチを混同することです。多くのツールは、一定期間にアカウントへ到達したユニーク数と、個別の投稿がそれぞれ獲得したリーチを別々に集計しています。期間中の投稿ごとのリーチを単純に足し合わせても、同じ人が複数の投稿を見ていれば重複が発生するため、期間全体のアカウントリーチとは一致しません。どちらの数字を見ているかを意識せずに一つの物差しとして扱うと、実態と違う評価をしてしまいます。
SNSやツールによる表記の違い
リーチとインプレッションという呼び方は共通していても、日本語での表示や集計の仕方はツールによって異なります。「到達数」「表示回数」「再生回数」のように、別の言葉に置き換えて表示するツールもあります。
集計のタイミングにも違いがあります。投稿直後の数字と、数日経ってから確定した数字とでは、値が変わることがあります。ボットや無効なアクセスの除外方法も、ツールごとに基準が異なります。広告として配信した投稿のリーチを、広告をかけない通常の投稿のリーチと合算して表示するツールと、別々に表示するツールがある点にも注意が必要です。
動画コンテンツでは、インプレッションに近い性質を持つ「再生回数」の定義にも幅があります。1秒以上の再生で1回とカウントする場合もあれば、一定の秒数まで見られて初めて1回とカウントする場合もあります。リール中心のアカウントとフィード投稿中心のアカウントを同じ基準で比較しようとすると、この違いだけで数字の見え方が変わってしまいます。複数のツールを併用している場合は、それぞれが何を「リーチ」「インプレッション」と呼んでいるのかを、数字を比較する前に確認しておく必要があります。
運用のどの場面でどちらを見るか
新しい層に接触を広げたい場面では、リーチを主に見ます。フォロワー以外にどれだけ届いたかが、そのままアカウントの拡大力を表すためです。
一方、既存のフォロワーに繰り返し思い出してもらいたい場面、たとえばキャンペーンの告知や重要なお知らせでは、インプレッションとフリークエンシーを見ます。広告運用の分野では、フリークエンシーが高くなりすぎると、同じ広告が同じ人に表示され続けて反応が鈍る「広告疲れ」が起きることが知られています。広告をかけない通常の投稿でも同じ現象は起こり得るため、フリークエンシーが極端に高い状態が続いていないかは確認しておく価値があります。
受託でアカウントのレポートを見ていると、リーチの数字だけを根拠に「拡散できている」と評価していた場面に立ち会ったことがあります。実際にはフリークエンシーが高いだけで、新規層への到達はほとんど動いていませんでした。もう一つ、複数の分析ツールを併用しているクライアントで、集計タイミングの違いにより、同じ投稿のリーチの数字が日によって食い違って見える場面もありました。どちらも、リーチとインプレッションを分けて確認していれば防げる誤解です。
まず、自分が普段見ている数字が、リーチとインプレッションのどちらなのかを確認してください。そのうえで、新規層に届けたい投稿なのか、既存フォロワーに念押ししたい投稿なのかを先に決め、その目的に合う方の数字を主指標にしてください。