「毎月レポートはもらっています。ただ、読んでも次に何をすればいいか分からなくて」。運用代行を乗り換えるか迷っている担当者から、そう聞くことがあります。レポートは届いている、数字も載っている、それでも社内で説明できない、という状態です。見積書には「レポート」という項目が1行あるだけなので、契約の時点では中身の差が見えません。この記事で分析と呼ぶのは、数字を並べたあとに、動いた理由と次に変えることを書く作業のことです。先に決めるのは、届いたレポートを社内で誰が読むかと、提出物が転記・説明・提案のどこまでを含むかの2つです。運用代行にその作業まで任せるときに、依頼の段階で何を決めておくかを整理します。

「考察つき」のレポートは、説明止まりと提案ありに分かれる

レポートが数字だけで終わるのか考察までつくのかという差を、会社を比べる軸として見る話はインスタ運用代行の会社の選び方に書きました。ここでは、その「考察つき」の中身をもう一つ細かく分けます。考察つきと言われた提出物でも、動いた理由の説明で終わるものと、次に変えることまで書かれるものは別です。

段階 出てくるもの
転記 今月の投稿数、届いた数、反応の数などを表に並べたもの
説明 数字が前の月と比べてどう動いたか、どの投稿がその動きを作ったかの記述
提案 次の月に何を変えるか、変えた結果を何で判断するかの記述

転記だけのレポートが悪いわけではありません。社内で読む人が自分で解釈する前提なら、それで足ります。困るのは、提案まで入っていると思って契約したのに、届いたのが転記だけだった場合です。見積書の1行からはこの差が読み取れないため、契約前に段階を聞いておきます。

聞き方は「分析はしてもらえますか」ではなく、「毎月の提出物に、次に何を変えるかまで書かれますか」の形にしてください。前者だと、「分析」が指す範囲が双方でずれたまま、返事だけが一致します。見積書の項目の読み方そのものはSNS運用代行の見積書の見方にまとめました。

SNS運用の基礎を4回のメールにまとめています
この記事で触れた指標の見方や、外注先の選び方をまとめた資料を無料で送ります。
講座の内容を見る

提出物の見本を1通見せてもらう

言葉で確認するより早いのが、実際の提出物を見せてもらうことです。他社のアカウントの数字は伏せた状態でも、項目の並び、文章の量、次の打ち手が書かれているかどうかは分かります。

見本を見るときは、次の3点を見てください。1つ目は、数字のあとに文章があるかどうかです。2つ目は、その文章が投稿の中身に触れているかどうかです。「保存が増えました」で終わるのか、「どの投稿で増えたか」まで書かれているかの差です。3つ目は、次の月にやることが書かれているかどうかです。

図1 提出物の見本で見る3点(模式図)

提出物の見本 今月の数字 数字のあとの文章 どの投稿で増えたか 来月やること ① 数字のあとに文章があるか 数字の表だけで終わっていないか ② 文章が投稿の中身に触れているか どの投稿で増えたかまで書かれているか ③ 次の月にやることがあるか
③の欄が無い見本は、上の表でいう転記か説明の段階までの型です。

見本を出せない場合もあります。守秘の都合で見せられないという説明なら、様式だけを白紙で見せてもらう頼み方ができます。項目名の並びだけでも、転記で終わる型か、記述が入る型かは判断できます。

分析を任せるなら、こちらも数字を見られる状態を残す

数字の扱いを任せるときに、依頼の時点で決めておく必要があるのが権限です。運用代行に分析まで頼むと、代行会社がアカウントの数字を見られる状態を作ることになります。ここで、こちら側も同じ数字を見られる状態を残しておくかどうかが分かれ目になります。

こちらが数字を見られない状態だと、届いたレポートの数字が合っているかを確かめる手段がありません。受託でアカウントを引き継ぐ場面では、前の会社のレポートに載っていた数字と、アカウントの中の数字が一致しない例に立ち会うことがありました。悪意があったというより、どの指標を指しているかが双方でずれたまま続いていた、という形です。

アカウントの持ち主と、契約が終わったときの返し方はSNS運用代行の契約書で確認する条項に書いたので、この節では契約中の話に絞ります。契約が続いているあいだ、こちらが自分でアカウントの数字を開いて確かめられるかどうかを、依頼の時点で決めておいてください。

指標の名前を、依頼の時点でそろえる

レポートで食い違いが起きやすいのが、指標の呼び方です。届いた人数(リーチ)を指す言葉と、表示された回数(インプレッション)を指す言葉は別のものです。この2つを同じ意味で使うと、実際より広く届いているように読めてしまいます。

依頼の時点で、レポートに載せる指標の一覧と、それぞれが何を数えた数字かを1枚の紙にして、双方で持っておいてください。言葉の定義をそろえる手順はSNSの効果測定の方法に、2つの指標の違いはリーチとインプレッションの違いに書いています。

この紙があると、担当者が交代したときにも同じ定義で報告が続きます。代行会社の担当が代わった月からレポートの数字の意味が変わる、という事態を減らせます。

様式を、どちらの型に合わせるか決める

もう一つ決めておきたいのが、レポートの様式です。毎月違う項目が並ぶレポートは、前の月と比べられません。比べられないレポートは、社内で説明に使えません。

ここで決めるのは、固定するかどうかだけではありません。代行会社が普段使っている様式をそのまま受け取るのか、自社で使っている表計算の形に合わせて出してもらうのかを選びます。代行会社の様式を使うなら、その様式で社内の説明が通るかを、契約前に1通見て確かめておきます。自社の表計算の形に合わせてもらう方がよい理由と、自社で作る場合の型はインスタのレポートの作り方の末尾に書きました。

どちらに決めても、型を変えるのは見る指標そのものを変えると決めたときだけにします。見た目を整えるための変更を毎月入れると、数ヶ月ぶんを並べたときに比較が途切れます。

依頼の時点で決めておく項目

ここまでを、依頼の段階で決める形に並べ直します。

  • 提出物が転記・説明・提案のどこまでを含むか
  • 提出の頻度と、いつ届くか(月初から何営業日以内か)
  • レポートに載せる指標の一覧と、それぞれの数え方
  • 代行会社に渡す権限の範囲と、こちらもアカウントの数字を直接見られる状態を残すか
  • 様式を代行会社の型にするか、自社の表計算の形に合わせてもらうか
  • レポートの作成に使った集計表を、契約が終わるときに受け取れるか
  • 契約のときに決めた目標の数字と、その月の実績を並べて載せるか
  • レポートが届いたあとに、中身の説明を受ける打ち合わせを持つか(持つなら頻度と時間)

最後の2つを補足します。目標の数字が載っていないレポートを読んでも、前の月より増えたか減ったかは分かりますが、目標に足りているかどうかは分かりません。目標と並べて載せてもらうと、提案の段階に書かれた「次に変えること」が、目標とのどの差を埋めるためのものかを読めます。説明の打ち合わせは、レポートを先に送ってもらい、読んだうえで質問を持って臨む形にすると、短い時間で済みます。打ち合わせが無い契約なら、質問をどこに送ればいつまでに返事が来るかを決めておいてください。

この8つは、提案を受ける場で口頭で聞いたあと、見積書か契約書のどちらかに書いてもらってください。

依頼の前にやることが1つあります。届いたレポートを社内で誰が読むのかを、先に決めてください。読む人が決まると、必要な段階が転記までなのか提案まで必要なのかが決まります。そこが決まらないまま「分析もお願いします」と伝えると、出てきたものが要る形かどうかを判断できません。