「三社に声をかけて話を聞きましたが、結局どこがいいのか分からなくなりました」。運用代行の会社を探している担当者から、こう相談されることがあります。
比較して選べない状態は、比較する軸を決めないまま話を聞いたときに起こります。会社名でおすすめを探す前に、自社の目的と任せたい範囲を決めておく必要があります。この記事では、比較の6つの軸、提案を受けたときに聞く質問、実績の見方、契約後の立ち上がりで見るべき点を順に書きます。特定の会社を推奨するものではありません。
おすすめ一覧を見ても、会社が決まらない理由
「インスタ運用代行 おすすめ」で出てくる一覧記事は、たいてい十数社が並んでいます。それを読んでも決まらないのには理由があります。
一覧に載っている会社は、掲載の枠を買っているか、その記事を書いた会社と取引がある場合があります。並び順が実力の順とは限りません。それ以上に問題なのは、一覧の比較項目が「対応SNS」「料金の下限」「実績数」のように、どの会社も同じ答えになる項目で揃えられていることです。差が出ない項目で並べても、選ぶ材料にはなりません。
料金の下限も当てになりません。同じ月額でも、投稿の本数、撮影が入るか、レポートが付くかで中身が変わります。金額を横に並べる前に、その金額に何が含まれるかを揃えないと比較になりません。費用の内訳の見方は、この記事の下にある関連記事にまとめています。
決めるために必要なのは、会社の一覧ではなく、自社が何を重く見るかの順番です。次の節から、その順番の作り方を書きます。
目的と任せる範囲を、話を聞く前に決める
比較を始める前に、二つを決めておく必要があります。一つは目的です。認知を広げたいのか、問い合わせを増やしたいのか、採用の応募を増やしたいのかによって、評価すべき実績や強みが変わります。もう一つは、任せる範囲です。企画だけを任せたいのか、撮影から投稿まで含めて任せたいのか、レポートや改善提案まで求めるのかによって、比較すべき体制が変わります。
目的と範囲が決まっていない状態で複数社の話を聞くと、それぞれの提案の良し悪しを判断する基準を持てないまま、印象や声のかけやすさで決めてしまうことになります。
目的と範囲を先に紙に書き出しておくと、複数社と話すときに、同じ質問を同じ順番で投げかけられるようになります。逆に、都度その場で聞くことを考えながら話を聞くと、会社ごとに聞いた内容がずれてしまい、あとから比較しようとしても材料が揃いません。
任せる範囲を曖昧にしたまま契約すると、あとから「ここまでやってもらえると思っていた」という食い違いが起きやすくなります。企画だけを依頼したつもりが、撮影や投稿は別料金だったと契約後に気づく、といった行き違いは、範囲を最初に言葉にしておけば防げるものです。
比較の軸は6つ
複数社を比較するときに見ておきたい軸を整理します。
| 軸 | 見るポイント |
|---|---|
| 得意な業種 | 過去に手がけた業種が自社と近いか、近くない場合にどう補うと説明しているか |
| 制作体制 | 一人の担当者が企画から撮影・編集まで担うのか、役割ごとに担当が分かれているか |
| 撮影の可否 | 撮影を制作側が行うのか、素材の提供が前提になっているか |
| レポートと改善提案 | 数字を並べるだけか、数字の背景にある考察や次の施策の提案がつくか |
| 担当者の入れ替わり | 契約期間中に担当者が交代する頻度と、交代時の引き継ぎ方法 |
| 契約条件 | 最低契約期間、解約予告期間、成果物の著作権や利用範囲の扱い |
粒度の違う項目を一つずつ比べるより、この6つを表にして各社の回答を並べる方が、どこに差があるかが見えやすくなります。
6つの軸すべてが自社にとって同じ重みを持つわけではありません。撮影を自社で用意できるなら撮影の可否の優先度は下がりますし、担当者が固定されることを重視するなら担当者の入れ替わりを重く見る、というように、自社の状況に合わせて軸ごとの優先順位を先に決めておくと、比較がぶれにくくなります。
提案を受けたときに聞く質問
提案を受ける場で聞いておくと、あとから比較しやすくなる質問があります。
- 過去に担当した業種で、成果につながらなかった例はあるか
- 撮影ができない月がある場合、どう対応するか
- レポートの提出頻度と形式のサンプルを見せてもらえるか
- 契約期間中に担当者が変わる場合、どういう手順で引き継ぐか
- 契約期間中に依頼内容を追加・変更したい場合、どう対応するか
受託の現場で他社からの乗り換え相談を受けると、契約時にこうした質問をしていなかったために、運用が始まってから初めて対応の遅さや体制の薄さに気づいた、という話を聞くことがあります。提案を受ける段階で聞いておけば、契約前の比較材料として使えます。
これらの質問は、良い回答を引き出すためというより、回答の具体性を見るためのものです。すぐに答えが返ってくる質問もあれば、持ち帰って確認が必要な質問もあります。持ち帰った質問にどれだけの期間でどんな形で回答が返ってくるかも、契約後のやり取りの速さを推測する材料になります。
実績の見方。数字の出し方に注意する
提案の場では、フォロワー増加数やエンゲージメント率といった実績の数字が示されることがあります。これらの数字は、運用を始めた時点のアカウントの状態や、運用した期間によって大きく変わるため、数字の大小だけで比較するのは適切ではありません。
確認しておきたいのは、その数字がどんな条件で出たものかです。運用を始めた時点のフォロワー数、運用した期間、広告出稿の有無によって、同じ「増加率」でも意味が変わります。受託の現場で他社の実績資料を見せてもらう機会があると、増加率が大きく見える資料の多くが、運用を始めた時点のフォロワー数が少ないアカウントの事例だった、ということがあります。数字を見るときは、その数字の分母や前提条件をあわせて確認してください。
実績を見せてもらう際は、増加率だけでなく、増加の背景に広告出稿があったかどうかも確認しておきたい点です。広告をかけない通常の投稿だけで積み上がった実績なのか、広告費をかけて増やした実績なのかで、自社が投稿だけで得られる成果の見立ては変わります。期間についても、短期間だけの伸びなのか、一定期間を通じて積み上がった数字なのかを確認すると、実績の質をより正確に把握できます。
決めた後、立ち上がりの期間で見るもの
契約して終わりではなく、契約後の最初の数ヶ月は、投稿の型や連絡のやり取りが安定するまでの調整期間として見ておく必要があります。最初の投稿の反応だけで契約の良し悪しを判断せず、比較の軸として決めた項目(担当者の対応、レポートの中身、修正への対応)が実際にどうだったかを確認してください。
立ち上がりの期間に確認しておきたい具体的な項目として、初回の投稿までにかかった日数、修正依頼への対応にかかった時間、定例の連絡頻度が契約前の説明と一致しているかなどがあります。契約前の説明と実際の動きにずれがある場合は、早い段階で担当者に確認し、必要であれば改善を求めてください。
立ち上がりの期間は、最初の比較で決めた優先順位を見直す機会でもあります。契約前に重視していた軸と、実際に運用を始めてから重要だと感じる軸がずれることもあるため、数ヶ月経った時点で一度、比較の軸を見直してみてください。
比較の軸を紙に書き出し、各社に同じ質問を投げかけたうえで、回答の具体性を見比べてから決めてください。