「同じ人が何回も見たら、そのたびに再生数は増えるんですか」。月次の報告でリールの数字を説明していたとき、担当者からこう聞かれました。答えは「増えます」です。
先に結論を書きます。リール(Instagramの短い縦型動画)の再生数は、いまは写真の投稿やストーリーズの表示回数と同じ「閲覧数」という名前で表示されます。閲覧数は、同じ人が繰り返し見た回数も合わせて数えています。そのため、再生数だけを見ても、何人に届いたのかは分かりません。数字を見るときに先にやることは二つです。何人に届いたかを示すリーチと並べること。公開から何日目の数字かをそろえること。出回っている目安や平均の数字は、この二つがそろっていないため、自社の判断には使えません。この記事では、数え方、比べ方、自社の基準の作り方と、数字を見る場所(リール一本ずつとアカウント全体、パソコンでの見方)、数字が出ないときの確かめ方を書きます。
再生数と閲覧数の違いは、形式ごとに分かれていたかどうかです
投稿したリールを開いて「インサイトを見る」を押すと、そのリールの数字が並びます。以前は「再生数」と表示されていた数字は、いまは「閲覧数」と表示されます。
変わったのは名前だけではありません。以前のインサイトでは、形式ごとに数字が分かれていました。リールは「再生数」、写真の投稿やカルーセル(複数枚をまとめた投稿)、ストーリーズは「インプレッション」(画面に表示された回数)です。いまのインサイトでは、この二つに代わって「閲覧数」が表示されます。Metaの開発者向けの変更履歴(Graph API v22.0)にも、インサイトの数字を取り出す仕組み(API)で閲覧数(views)を追加し、インプレッションと再生数(plays)を2025年4月21日に廃止することが書かれています。
そのため、閲覧数という名前だけでは、それが再生の回数なのか表示の回数なのかは区別できません。リールと写真の投稿の閲覧数を同じ列に並べて、大きさだけで比べないでください。
図1 形式ごとに分かれていた二つの数字が、閲覧数にまとまりました
検索では今も「再生数」という言葉が使われているので、この記事では、リールについては再生数と閲覧数を同じ意味で使います。ただし、切り替えの前後で数え方まで同じとは限りません。以前の再生数と並べるときの注意は、後の節で書きます。
リールの閲覧数は、再生された回数です。一人が三回見れば、三と数えます。リールは最後まで流れると、自動で頭から繰り返されます。見ている人が画面を送らずに置いておくと、その繰り返しも回数に入ります。
同じ画面には、ほかの数字も並んでいます。見る前に、それぞれが何を数えているかを押さえておいてください。
| 表示される数字 | 数えているもの |
|---|---|
| 閲覧数 | 再生された回数。同じ人の繰り返しも含む |
| リーチしたアカウント数 | リールが画面に一度でも表示された人の数。同じ人は一と数える |
| 視聴時間 | 再生された時間の合計。繰り返しの分も含む |
| 平均視聴時間 | 一回見られたときに、平均で何秒見られたか |
| スキップ率 | 再生のうち、冒頭で画面を送られたものの割合 |
「閲覧数」を押すと、その内訳が出ます。フォロワーとフォロワー以外の割合と、ホーム、発見、プロフィールなど、見られた場所ごとの回数です。発見の行の読み方は、発見タブに載ったかの確かめ方に書きました。
アカウント全体の閲覧数は、別の画面に出ます。プロフィールの「プロフェッショナルダッシュボード」から入ると、期間を区切った閲覧数の合計が表示されます。この合計には、リールだけでなく、写真の投稿やカルーセル、ストーリーズなどの閲覧数も入っています。Metaのリールのインサイト追加の発表(2021年5月)でも、リールの数字はプロフィールから開くインサイトの概要に反映されると説明されています。
そのため、合計の閲覧数が増えた月でも、増えた分がリールによるものか、ストーリーズによるものかは、合計の数字だけでは分かりません。リール一本の閲覧数を合計と並べて「全体の何割がこのリールか」を出すときも、合計の期間と、そのリールを公開してからの日数が合っていなければ、割合は意味を持ちません。リールの調子を見るときは、合計ではなく、リール一本ずつの数字を並べてください。同じダッシュボードの中に、投稿ごとの数字の一覧もあります。並べ方は最後の節に書きました。
項目の名前や並び順は、アプリの更新で変わることがあります。名前が違っていても、その数字が「回数」を数えているのか「人数」を数えているのかを見分ければ、読み違えません。回数と人数の違いは、リーチとインプレッションの違いと同じ考え方です。
閲覧数をリーチで割ると、一人が何回見たかが分かります
閲覧数だけを見ていると、同じ数字の中身の違いに気づけません。多くの人に一回ずつ見られた結果なのか、少ない人に何度も見られた結果なのかで、そのリールが果たした役割は変わります。
この違いを見るには、閲覧数をリーチしたアカウント数で割ります。出てきた数字は、届いた人一人あたり、平均で何回再生されたかです。一に近ければ、多くの人が一度見て先に進んでいます。一を大きく超えていれば、繰り返し見られています。
図2 閲覧数が同じでも、届いた人数が違うことがあります(数字は例)
ここで気をつけたいのが、動画の長さです。短いリールほど、同じ時間のあいだに何周も繰り返されます。短い動画は、内容に関係なく閲覧数が積み上がりやすい作りになっています。長さの違うリールを閲覧数だけで比べると、短い方が良い企画に見えてしまいます。
受託でリールの数字を月ごとに並べていると、閲覧数の上位に短いリールが固まる月があります。そういう月は、リーチの多い順に並べ直してみてください。順位が入れ替わり、フォロワー以外に広く届いたリールと、届いた人に繰り返し見られたリールが分かれて見えることがあります。
再生数は公開後も増え続けます。何日目の数字かをそろえてください
リールの閲覧数は、公開した日で止まりません。数日かけてフォロワー以外の人に広がり、その間に数字が伸びていきます。しばらく経ってから、また伸び始めることもあります。
このため、集計する日がそろっていないと、比べた結果が崩れます。月末にまとめて数字を集めると、月の初めに出したリールは長く伸びた後の数字になり、月末に出したリールは伸び始めたばかりの数字になります。社内の報告で「今月後半のリールは弱かった」と言われて確かめると、集計した日の違いだけだった、ということは珍しくありません。
対策は、比べる日を決めることです。たとえば「公開から7日目の閲覧数とリーチ」のように、すべてのリールを同じ日数で記録します。インサイトに出るのは、見た時点までの合計です。7日目の数字は、7日目に見て書き留めておかないと、後から取り出せません。投稿した日に、何日目に記録するかを予定に入れておいてください。
閲覧数が出ないとき、数字が合わないときに確かめること
リールの数字を見に行って、「インサイトを見る」が見つからない、または別の画面と数字が合わない、ということがあります。そのときは、次の四つを順に確かめてください。
図3 数字が出ない、合わないときに確かめる四つ
一つ目は、アカウントが公開になっているかです。Instagramのヘルプセンターの説明では、インサイトを見るには公開アカウントが必要で、個人用のアカウントでもプロアカウントでもよいとされています。会社のアカウントを非公開にしている場合は、この条件に当てはまりません。
二つ目は、リールを投稿した日です。同じヘルプには、リールのインサイトが見られるのは2021年5月14日(米国時間)以降に投稿したリールで、見られる期間は最初に公開した日から最大2年間と書かれています。それより前に出したリールや、公開から2年を過ぎたリールは、「インサイトを見る」から数字を確かめられません。過去のリールで自社の目安を作るときは、公開から2年以内のものから選んでください。
三つ目は、数字が出そろうまでの時間です。Metaの開発者向けのインサイトの説明(APIのリファレンス)には、数字の計算に使うデータが最大48時間遅れることがあると書かれています。この説明は、インサイトの数字を取り出す仕組み(API)についてのものです。分析ツールや書き出した表の数字がアプリの画面と合わないときは、見た時点の直近2日分がまだ入りきっていないことがあります。前の節で決めた「7日目」の数字は、アプリの画面で見たのか、ツールで取り出したのかを表の横に書いておき、同じ取り方の数字どうしで比べてください。
四つ目は、広告の分が入っているかどうかです。同じ説明には、閲覧数(views)は広告をかけない通常の投稿としての反応だけを数え、広告からの反応は数えないと書かれています。広告をかけたリールは、APIで取り出した閲覧数に広告の分が入りません。広告をかけたリールとかけていないリールを同じ表に並べるときは、その数字に広告の分が含まれているかを、表の横に書いておいてください。
目安や平均の数字が、自社の判断に使えない理由
「リール 再生数 目安」や「リール 再生数 平均」で調べると、フォロワー数ごとの目安をまとめた解説が出てきます。社内で「うちの数字は良いのか悪いのか」を説明するために、こうした数字を探したくなるのは自然なことです。ただし、その数字を自社のリールに当てはめても、良し悪しは判断できません。理由は三つあります。
一つ目は、ここまでに書いた条件がそろっていないことです。何日目に集計した数字なのか、どのくらいの長さのリールなのかが書かれていない目安は、自社の数字と並べる前提を欠いています。
二つ目は、広告の有無です。広告をかけたリールと、広告をかけない通常の投稿では、届く仕組みが違います。どちらの数字を集めたのかが分からない目安は、比べる相手になりません。
三つ目は、指標の切り替えです。最初の節で書いたとおり、2025年4月にAPIの再生数(plays)が廃止されました。いつ時点の数字なのかが分からない目安は、いまの閲覧数と同じものを数えているとは限りません。自社の過去の数字と比べるときも、この時期をまたいでいないかを確かめてください。
目安の代わりに使えるのは、自社の過去のリールです。フォロワーの集め方も、撮り方も、出す時間帯も同じ条件で積み上がった数字なので、比べる意味があります。
自社の目安は、長さと日数をそろえた表で作ります
過去のリールの数字は、三つの入り口から見られます。閲覧数だけなら、プロフィールでリールのタブを開くと、並んだリールの左下にそれぞれの閲覧数が出ています。ここに出るのは閲覧数だけなので、表を作るときは残りの二つを使います。一本だけ見るなら、そのリールを開いて「インサイトを見る」を押します。何本もまとめて書き写したいときは、プロアカウントなら、プロフィールの「プロフェッショナルダッシュボード」から入ると、公開した投稿の数字が一覧で並びます。
図4 数字を開く三つの入り口(模式図)
パソコンで書き写すときは、ブラウザでinstagram.comを開き、左側のメニューの「ダッシュボード」から入ります。プロアカウントの場合は「プロフェッショナル向け」の下の「インサイト」を選び、「アカウント」か「コンテンツ」を切り替えてから期間を選びます。ヘルプセンターの説明では、ここで選べる期間は過去90日以内です。それより前に出したリールは期間の指定に入らないので、図4の真ん中の入り口のように、リールを一本ずつ開いて確かめてください。
自社の目安は、次の手順で作れます。
- 過去のリールを、長さで二つか三つに分ける(たとえば、15秒未満、15秒から30秒、それより長いもの)
- 公開から1か月以上、2年以内のリールについて、いまの閲覧数とリーチを書き出す
- 閲覧数をリーチで割り、一人あたりの回数も横に並べる
- 長さの区分ごとに、リーチの真ん中の値(小さい順に並べたときの中央の値)を出す
これで仮の目安ができます。これから出すリールは、前の節で決めた日数の数字を記録していき、本数がそろった時点で仮の目安と置き換えてください。
目安の中心にリーチを置くのは、閲覧数が繰り返しや動画の長さで膨らむためです。閲覧数と一人あたりの回数は、リーチが同じくらいのリールどうしを比べるときに使います。平均ではなく真ん中の値を使う理由は、一本だけ大きく伸びたリールに引っ張られないようにするためです。この考え方は、リーチ率の目安で書いた基準の作り方と同じです。
目安を下回ったリールが出たら、冒頭で離れたのか、途中で離れたのか、そもそも表示されていないのかを切り分けます。見る順番はリールが伸びないときに見る順番にまとめました。閲覧数とは別に、保存された数も同じ表に並べておくと、繰り返し見られたリールが後から見返す価値のある内容だったかどうかも分かります。
今日から出すリールについては、公開した日に、7日目の記録日を予定表に入れておいてください。