「リーチ率が130%と出たのですが、計算を間違えていますか」。数字の見方を説明していたとき、担当者からこう聞かれました。計算は間違っていませんでした。
先に結論を書きます。インスタのリーチ率は、リーチ数をフォロワー数で割って100を掛けた数字です。この式では100%を超えます。フォロワー以外の人にも投稿が届くためです。目安としてよく引かれる「フォロワー1万人未満なら投稿で34%」という数字は、米国の口コミ管理会社Bazaarvoiceが自社顧客の上位25%から出したもので、平均ではありません。エンゲージメント率と何が違うか、リーチ数をアプリのどこで見るか、この数字の使い方、自社の基準を作る手順を順に書きます。
インスタのリーチ率とは。リーチ数をフォロワー数で割った割合です
リーチ率とは、その投稿がフォロワー数に対してどれだけの人数に届いたかを表す割合です。次の式で出します。
リーチ率 = リーチ数 ÷ フォロワー数 × 100
リーチ数は、その投稿を見た人の数です。同じ人が三回見ても、リーチ数では1と数えます。表示回数とは数える対象が違うので、リーチとインプレッションの違いを先に確認しておくと、式に入れる数字を取り違えません。
分母には、もう一つの取り方があります。フォロワー数ではなく、投稿を見た人の中でフォロワーだった人数を使う方法です。ただし、この取り方をすると、アカウントの規模に対して届いたかどうかが分からなくなります。最初に決めるなら、分母はフォロワー数で構いません。大事なのは、決めた式を毎月変えないことです。
フォロワー数は日々動きます。月末時点の数字を使うのか、投稿した日の数字を使うのかも、先に決めてください。増えている途中のアカウントでは、この違いだけで数%動きます。
図1 リーチ率が100%を超えるのは、フォロワー以外にも届くからです(数字は例)
エンゲージメント率とは、分子が違います
リーチ率と並んでよく出てくるのが、エンゲージメント率です。名前が似ていますが、分子に入れる数字が違います。リーチ率の分子は投稿が届いた人数で、エンゲージメント率の分子は、いいね・コメント・保存などの反応の数です。
| リーチ率 | エンゲージメント率 | |
|---|---|---|
| 分子 | リーチ数(届いた人数) | いいね・コメント・保存などの反応の数 |
| 分母 | フォロワー数(この記事の式) | フォロワー数・リーチ数・表示回数のどれか(ツールによって違う) |
| 分かること | フォロワー数に対して、何人に届いたか | 届いたあと、どれだけ反応されたか |
エンゲージメント率は、分母の取り方が一つに決まっていません。リーチ数を分母にする計算では、リーチ率の分子に入れたリーチ数が、そのままエンゲージメント率の分母になります。この計算で見ると、リーチ率が高くてエンゲージメント率が低い投稿は、届いたものの反応されなかった投稿です。リーチ率が低いなら届け方、エンゲージメント率が低いなら投稿の中身と、直す場所が違うので、二つは別の列に記録してください。分母の選び方はエンゲージメント率の計算式に書きました。
リーチ数とフォロワー以外の割合を、アプリで確認する場所
式の分子に入れるリーチ数は、投稿ごとのインサイトに出ています。プロアカウントなら、アプリでフィード投稿を開くと画像の下に「インサイトを見る」が出ます。これを押してください。投稿の「…」のメニューから「インサイト」を選んでも、同じ画面が開きます。リールはこちらから入ります。
開いた画面には、閲覧数と並んで「リーチしたアカウント数」が出ます。式に入れるのは「リーチしたアカウント数」のほうです。閲覧数は以前インプレッションと呼ばれていた表示回数で、同じ人が繰り返し見た分も入ります。分子に入れるとリーチ率が実際より高く出ます。
同じ画面には、フォロワーとフォロワー以外がそれぞれ何%だったかも出ます。後の節で使う数字です。この割合が人数の内訳なのか回数の内訳なのかは、画面の見出しで確かめてから書き写してください。ボタンの位置や項目の名前、並び順は、アプリの更新で変わることがあります。
月全体のリーチを見たいときは、投稿ごとではなくアカウント全体のインサイトを開きます。開き方はインサイトの見方に書きました。
図2 リーチ数を確認する場所(模式図)
目安として出回る「1万人未満で34%」の出所
「インスタ リーチ率 目安」で調べると、フォロワー規模ごとの数字を載せた解説がいくつも出てきます。載っている数字はほぼ同じで、たどると一つの出所に行き着きます。米国の口コミ管理会社Bazaarvoiceが2023年4月に公開した記事(10 key Instagram metrics you should use)です。
その記事に載っている数字は次のとおりです。
| フォロワー規模 | フィード投稿のリーチ率 | ストーリーズのリーチ率 |
|---|---|---|
| 1万人未満 | 34% | 7.5% |
| 50万1千人以上 | 8% | 1% |
ここで見落とされている点が二つあります。
一つ目は、この数字が平均ではないことです。元の記事は、小売・EC・サービス業の顧客876社のうち、成績が上位25%だった企業の数字だと書いています。日本語の解説では「平均値」として紹介されることが多いのですが、元は上位4分の1の水準です。自社がこの数字に届かなくても、平均を下回っているとは言えません。
二つ目は、集計対象がBazaarvoiceの顧客企業、つまり米国中心の小売・EC系のアカウントだということです。日本の企業アカウントを集計した数字ではありません。
リーチ数の目安を人数で知りたい場合は、この割合に自社のフォロワー数を掛けて直します。フォロワー1,000人のアカウントなら、34%はフィード投稿1本あたり340人です。この340人は上位25%の水準を人数に直したもので、平均の人数ではありません。
この数字を社内で使うなら、「米国の小売系アカウントの上位25%は、1万人未満の規模で投稿のリーチ率34%だった」という一つの参考値として扱ってください。目標値に置くと、次の節から書く理由で判断を誤ります。
リーチ率は100%を超えます。フォロワー以外に届くためです
冒頭の130%は、フォロワー数の1.3倍の人に届いたという意味です。おかしな数字ではありません。
インスタグラムは、フォローしていない人にも投稿を出します。発見タブ、リールのタブ、ハッシュタグや検索の結果、他の人がシェアしたストーリーズ。この経路で届いた人は、全員リーチ数に入ります。フォロワー数は分母に固定されているので、外側に広がるほどリーチ率は上がっていきます。
逆に、リールをほとんど投稿していないアカウントでは、リーチ率が低い水準に張り付きます。フィード投稿は、フォロワーの画面に出ることが中心で、外側に広がる経路が少ないためです。同じ会社の同じ担当者が作っていても、投稿の種類が変わればリーチ率は別の数字になります。
ここから分かるのは、リーチ率という一つの数字が二つのことを同時に表しているという点です。一つは、フォロワーにきちんと届いているかどうか。もう一つは、フォロワーの外にどれだけ広がったか。この二つは、直す方法がまったく違います。
フォロワー外に届いた割合を、分けて見てください
投稿ごとのインサイトの画面には、フォロワーとフォロワー以外がそれぞれ何%だったかが出ます。開き方は最初の節に書きました。ここを見てください。
フォロワー以外の割合が低いまま横ばいなら、投稿は既存のフォロワーの中で回っています。アカウントは広がっていません。この状態でリーチ率だけを上げようとして投稿本数を増やすと、同じ人に何度も表示されるだけで終わります。
フォロワー以外の割合が高いのにフォロワーが増えていないなら、届いてはいるが、発信元への関心までは動いていません。この場合に見る数字は、プロフィールへ進んだ人の割合です。プロフィールアクセス率を合わせて見ると、投稿を直すのかプロフィールを直すのかが決まります。
図3 フォロワー以外の割合を分けると、次に見る数字が変わります
受託でアカウントを見ていると、リーチ率が上がった月の中身がリール一本の伸びだけで、他の投稿は前月と変わっていなかった例があります。平均値は一本の突出に引っ張られます。月の平均を出すときは、いちばん伸びた投稿を除いた数字も並べておくと、実力の側が見えます。
平均の目安を借りると、判断を誤ります
「業種の平均は何%ですか」と聞かれることがあります。前の節の34%のような数字を持ってきても、自社の判断には使えません。理由が三つあります。
一つ目は、フォロワーの集め方が違うことです。キャンペーンや相互フォローで集めたフォロワーは、投稿を見ない層を多く含みます。分母だけが大きいので、リーチ率は低く出ます。集め方の違いは、外から見た数字には現れません。
二つ目は、投稿の種類の比率が違うことです。前の節で書いたとおり、リール中心のアカウントとフィード投稿中心のアカウントでは、同じ努力でも数字の水準が変わります。平均値は、この比率を揃えずに混ぜたものです。
三つ目は、アカウントの規模です。フォロワーが少ないアカウントほど、分母が小さいためリーチ率は高く出ます。規模の違う会社の数字を横に並べると、規模の差を実力の差として読んでしまいます。
目安が欲しくなるのは、社内で「この数字は良いのか悪いのか」を説明する必要があるからだと思います。その説明に使えるのは他社の平均ではなく、自社の過去の数字です。何を目標の数字として置くかについては、SNSのKPIの決め方に整理しました。
投稿の種類ごとに、自分の基準を作る手順
自社の基準は、三か月あれば作れます。手順は次のとおりです。
- 過去三か月の投稿を、リール、フィード投稿、カルーセルのように種類で分ける
- 種類ごとに、投稿一本ずつのリーチ率を出す
- 種類ごとに、真ん中の値(数字を小さい順に並べたときの中央にあるもの)を出す
- その中央の値を、その種類の基準として書き留める
図4 真ん中の値を使うのは、一本だけ伸びた投稿に引っ張られないためです(数字は例)
平均ではなく真ん中の値を使うのは、一本だけ伸びた投稿に引っ張られないようにするためです。この基準を持っておくと、翌月からは「リールの基準を下回った投稿が三本あった」と言えます。
基準は、フォロワー数が大きく動いたら作り直してください。分母が変わっているので、前の基準とは比べられません。
リーチ率が下がったとき、投稿を変える前に確認すること
数字が下がると、投稿の中身を変えたくなります。その前に、次の三つを確認してください。
投稿した本数が減っていないかどうか。本数が減れば、月の合計リーチは下がります。一本あたりのリーチ率が下がったのかどうかは、本数をそろえて見ないと分かりません。
投稿の種類の比率が変わっていないかどうか。先月はリールが多く、今月はフィード投稿が多いなら、水準が変わるのは当然です。
集計した日がそろっているかどうか。リールは公開から数日かけて届く範囲が広がります。月末に出した投稿を月末に集計すると、その投稿だけ低く出ます。
この三つに当てはまらず、同じ種類の投稿を同じ本数出して、同じタイミングで集計してもなお下がっているなら、そこで初めて中身の話になります。まずは、直近三か月の投稿を種類ごとに分けて、真ん中の値を出すところから始めてください。