「あの会社みたいな投稿を作ってほしい」。打ち合わせでそう言われて画面を見せてもらうと、投稿一本ずつの作りは、こちらが普段お預けいただいているアカウントと大きくは違いませんでした。違っていたのは、去年の同じ月から今月まで、投稿が一度も途切れていないことでした。
先に結論を書きます。インスタ運用がうまいと言われる企業のアカウントで再現できるのは、投稿の見た目ではなく、続けられる形のほうです。外から観察できる共通点は四つあります。プロフィールを読めばアカウントの用途が分かること、同じ型の投稿が繰り返されていること、シリーズに通し名や番号が付いていること、コメントへの返し方が一定であること。この四つは、社員数が少ない会社でも作れます。
うまい企業のアカウントは、投稿が上手いのではありません
比べる相手として大きな会社のアカウントを挙げると、たいてい話は撮影の質に向かいます。写真がきれいで、動画の作りが凝っていて、社内に撮れる人がいる。そこを真似しようとすると、最初の数本で止まります。
外から見て「うまい」と感じる正体は、別のところにあります。開いた瞬間に何のアカウントか分かり、下にスクロールしても同じ調子の投稿が並んでいて、間隔が空いていない。この三つが揃うと、投稿一本ずつの完成度が高くなくても、運用されている会社に見えます。
逆に、一本ずつは丁寧に作られているのに手応えが出ないアカウントは、並びが揃っていないことが多いです。先月は商品の写真、今月はイベントの報告、その前は社長の挨拶。見る側は、次に何が出てくるか分からないアカウントをフォローする理由を持てません。
事例として挙がるアカウントの読み方については、インスタの企業事例を集めても、自社の投稿が決まらない理由に書きました。数字の大小ではなく、成立している条件を先に見る話です。
外から見て分かる共通点は、四つあります
一つ目は、プロフィールを読めばアカウントの用途が分かることです。会社概要をそのまま短くしたものではなく、この場所で何を出しているかが書いてあります。読んだ人が、フォローすると何が届くのかを想像できる状態です。
二つ目は、同じ型の投稿が繰り返されていることです。型(投稿の作り方の決まった形)が三つか四つあって、それが順番に回っています。新しい企画を毎回考えていないので、担当者の負荷が上がりません。
三つ目は、シリーズに通し名や番号が付いていることです。「◯◯の選び方 その5」のような形です。見る側は前の回を探しやすくなり、作る側は次に何を出すかを毎回悩まずに済みます。
四つ目は、コメントへの返し方が一定であることです。全部に長文を返しているアカウントは、ほとんどありません。返す種類と返さない種類が決まっていて、返す文の長さも揃っています。
この四つは、撮影の体制や予算とほとんど関係がありません。決めごとを先に置いてあるかどうかだけの差です。
中小企業が真似できないのは、素材の量と撮影の体制です
一方で、規模の大きい会社のアカウントには、人手の少ない会社が真似できない部分があります。ここを切り分けておかないと、追いつかない相手を追い続けることになります。
真似できない部分は二つです。一つは、社内に写真や動画の在庫があることです。商品撮影を定期的に行っていて、広告や紙の資料のために撮った素材が余っています。SNS用に一から撮る必要がありません。もう一つは、撮る人と出す人が分かれていることです。撮影の日程が先に決まっていて、担当者は出す作業に集中できます。
社員数の少ない会社では、同じ人が撮って、書いて、出して、数字も見ます。この状態で在庫のあるアカウントと同じ本数を出そうとすると、二か月ほどで素材が尽きます。素材が尽きたときに何が起きるかは、インスタ運用のコツは続く仕組みにあるに書いたとおりです。
真似する対象を選ぶときは、フォロワー数が近いアカウントより、社内の人数が近そうなアカウントを探してください。判断の材料は、投稿に写っている人の数、撮影場所の種類、一か月の投稿本数です。この三つが自社と近ければ、やり方を移せる可能性があります。
担当が二人以下の会社が、先に決める三つ
人手が少ない前提で運用を成立させるには、始める前に決めるものが三つあります。
一つ目は、撮る日です。投稿のたびに撮るのではなく、月に一日か二日、撮影の日を決めてまとめて撮ります。この日を決めていない会社は、投稿の前日に素材を探す形になり、そこで止まります。
二つ目は、型の数です。三つか四つに絞ってください。多いほど良さそうに見えますが、型が増えるほど毎回の判断が増えます。絞った型を三か月回して、反応の差を見てから入れ替えるほうが早いです。
三つ目は、出さない日を決めることです。毎日出すと決めると、素材のない日に無理をして、質の揃わない投稿が混ざります。週に何本出すかを先に決めて、その本数を守るほうが、並びは揃います。
受託でお預かりしたアカウントでも、本数を増やした月より、型を絞って同じ形を繰り返した月のほうが、投稿ごとの数字のばらつきが小さくなる例があります。ばらつきが小さいと、何が効いたのかを判断できるようになります。
続いている会社は、投稿を減らす決め方を持っています
うまくいっている会社の運用で見落とされやすいのが、やめ方を決めてあることです。
続いているアカウントの担当者に聞くと、忙しい月にどこを削るかが先に決まっています。撮影の日は動かさない、本数は半分にしてよい、コメントの返信は翌日にまとめる、といった形です。削る場所が決まっていると、忙しい月を越えたあとに元の運用へ戻れます。
決めていない会社では、忙しくなった時点で全部が止まります。そして再開のときに、また企画から考え直すことになります。止まった期間そのものより、再開に必要な労力のほうが重くなります。
BtoBのように投稿の題材が限られる会社では、この削り方をさらに具体的に決めておくと運用が保ちます。用途の決め方はBtoB企業のインスタ運用は何のためにやるかに整理しました。
今月やることを一つに絞るなら
真似したいアカウントが決まっているなら、その投稿を新しい順に三十本、種類ごとに分けて数えてください。何の型が何本あるかが出ます。多くの場合、三つか四つの型に収まります。
そのうえで、自社で今の人数で回せそうな型を二つ選び、来月はその二つだけを出してください。増やすのは、二つが回るようになってからで構いません。