「来期から社内でやることになりました」。運用の打ち合わせで、担当者の方からこう切り出されることがあります。予算の見直しであったり、社内に人が入ったことであったり、理由はその都度違います。
SNS運用の内製化とは、外部に任せていた運用の作業を、自社の社員の手に戻すことです。結論を先に書きます。内製化でつまずくのは、投稿を作る技術ではありません。誰が素材を集めるのか、誰が公開してよいと判断するのか、どの数字を見て次を決めるのか。この三つが空いたまま切り替えると、運用は数か月で止まります。
内製化で最初に決めるのは、投稿を作る人ではありません
社内に戻すと決まったとき、最初の議題が「誰が作るか」になることがよくあります。作る人は確かに要りますが、そこだけ決めても運用は回りません。作った投稿を出してよいと言う人がいなければ、投稿は下書きのまま溜まります。
先に決めるのは、次の三つです。素材を集める人、公開の可否を判断する人、数字を見て次の方針を決める人。この三つは兼任できますが、空欄にはできません。一人が三つとも担う小さな体制でも、本人が「今日は自分がどの役割で動いているのか」を分けて考えられていれば、運用は続きます。
外部に任せている間は、この三つのうち二つを外部が肩代わりしていることがあります。素材を撮りに来てくれて、数字も月末にまとめて出してくれる状態です。社内に残っていたのは公開の可否を判断する仕事だけ、ということも珍しくありません。内製化の話が出た時点で、いま社内に残っているのは三つのうちどれなのかを確認しておくと、埋めるべき欄が具体的になります。
外に出していた作業を、四つに分けて棚卸しする
外部に任せていた範囲は、契約書の一行では見えません。実際には次の四つが混ざっています。
- 企画:何を出すかを決める作業
- 制作:撮影、編集、投稿文を書く作業
- 運用:出す日を決めて公開し、コメントに返す作業
- 分析:数字を集めて、次の企画に渡す作業
この四つを紙に書き出し、いま外部の誰がやっているか、社内の誰が受け取れるかを埋めていきます。書き出すときは、月に何回発生する作業なのかも横に足しておきます。月に一度の企画会議と、週に三回発生する編集では、社内で引き受けたときの負担がまったく違います。回数まで書くと、社内の担当者が本来の仕事の合間に置ける量かどうかを、切り替える前に見当を付けられます。埋まらない欄が内製化の課題です。受託の現場では、企画と制作は社内でやる想定になっていても、分析だけが誰にも割り当てられないまま切り替え日を迎える例をよく見ます。分析が抜けると、投稿は出続けるのに、良かったのか悪かったのかを誰も言えない状態になります。
社内に必ず残すものは、権限と判断の記録
外部に任せる範囲をどう決めるにしても、社内から出してはいけないものがあります。アカウントの管理権限と、過去の判断の記録です。
管理権限は自社の担当者が持ち、外部の担当者には作業に必要な権限だけを渡します。権限が外部側にしかない状態で契約が終わると、アカウントに入れなくなります。切り替えのときに確認するのは、アカウント本体の管理者が自社の人になっているか、広告を出している場合はその管理画面も自社側に紐づいているか、そして投稿を予約する画面に社内の担当者が入れるか、の三点です。三点とも、切り替え日の当日ではなく、外部の担当者と連絡が取れるうちに確かめておきます。判断の記録は、いつ何を試して、どうだったから次に何を変えたか、という短いメモの積み重ねです。数字そのものは後から取り直せますが、なぜその投稿を出したのかという理由は、担当者が抜けると消えます。引き継ぎで抜けやすい項目については、SNS担当者が代わるときに引き継ぐもので詳しく書きました。
一人に寄せると、その人が抜けた時点で止まる
内製化した直後は、意欲のある担当者が一人で全部を引き受けることがあります。立ち上がりは早くなりますが、その人の異動や休職で運用が止まります。
止めないための最低限は、二人目を作ることです。二人目に全部を教える必要はありません。公開の操作ができること、素材の置き場所を知っていること、この二つだけでも、止まる期間は短くなります。もう一つは、作業の型を文章にしておくことです。撮影のときに何を撮るか、投稿文に何を必ず入れるか、公開前に誰が見るか。頭の中にある手順を三十分かけて書き出すだけで、二人目に渡せる形になります。
全部を社内に戻さない選択肢もあります
内製化は、全か無かで決める必要はありません。四つに分けた作業のうち、社内の人手と時間で回せるものだけを戻し、残りは外に置いたままにできます。
判断の材料は、その作業に社内の一次情報がどれだけ要るかです。企画と、商品や価格の説明は、社外の人が持っていない情報を使います。ここは社内に寄せた方が速くなります。反対に、動画の編集や、決まった型で出す作業は、社内でやる理由が人件費以外に見つからないこともあります。何を外に残すかを先に決めておくと、内製化の途中で手が回らなくなったときに、慌てて全部を戻す判断をしなくて済みます。任せる範囲の決め方はインスタ運用代行に丸投げできる範囲にまとめています。
切り替えの前に、三か月分の準備をする
切り替え日を決めたら、その前の三か月でやることが三つあります。
一つ目は、外部の担当者が使っている素材の置き場所と、過去の投稿データを自社側に移すことです。二つ目は、社内の担当者が実際に一本作ってみることです。読むだけでは、どこで時間がかかるかが分かりません。三つ目は、公開までの承認の道すじを決めて、一度その通りに動かしてみることです。承認で止まる問題は、切り替えた後に必ず出てきます。
準備の途中で「これは社内では回らない」と分かることもあります。切り替え日の前に分かれば、範囲を狭める相談ができます。まずは、外に出している作業を四つに分けて紙に書き出すところから始めてみてください。