「うちは何もしなくて大丈夫ですか」と、初回の打ち合わせでよく聞かれます。

先に結論を書きます。インスタの運用代行に丸投げ(作業も判断も外部に預けきること)をしても、社内の作業がゼロになることはありません。減るのは手を動かす作業で、残るのは決めることと、社外の人がどうやっても持てない情報を渡すことです。この二つを誰がやるか決めないまま契約すると、代行会社の側の作業が手前で止まり、投稿の出ない月が生まれます。

丸投げで減るのは、手を動かす作業だけ

外部に預けられる作業と、社内に残る作業は、はっきり分かれます。

外部に預けられるのは、企画を考える、原稿を書く、写真や動画を編集する、投稿文を書く、投稿する日を組む、投稿する、数字を集めて月次の報告にまとめる、という一連の手作業です。ここは代行会社の人手と時間で回ります。

社内に残るのは三つです。素材を出すこと、内容を承認すること、商品やサービスの一次情報を渡すことです。この三つは外に出せません。写真の元データは会社の中にあり、社名で出す投稿の可否を決められるのは会社の人だけで、商品の仕様や在庫の事情は社外の人が調べても出てきません。

「丸投げしたい」という言葉のほとんどは、実際には「手を動かす作業をやりたくない」という意味です。そこまでなら預けられます。

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素材が出てこないと、代行側は手前で止まる

受託の現場でいちばん多く止まるのは、企画でも編集でもなく、素材の受け渡しです。

構成まで決まっていても、店内の写真がない、商品の切り抜きがない、担当者の顔出しの可否が決まっていない、という理由で作業が動かなくなります。代行会社は撮影に入る契約でなければ、社内にある素材を待つしかありません。待っている間、月の本数だけが減っていきます。

これを避ける方法は単純です。契約の時点で、素材を出す人を一人決めて、渡す方法と締め切りを固定します。共有フォルダを一つ作って、そこに入れたものだけを使う、という取り決めでも十分です。誰かが思い出したときに送る運用にすると、必ず月の後半で詰まります。

撮影も預けたい場合は、撮影が契約に含まれているかを確認してください。含まれていなければ、素材を出す作業は社内に残ります。含まれている場合も、撮影の日に立ち会う人と、撮る場所を開ける段取りは社内の仕事です。撮影を頼めば素材の作業がなくなる、とは考えないでください。

承認を出す人を決めていないと、投稿が遅れる

もう一つ止まるのが承認です。

原稿と画像が出来上がっても、それを世に出してよいと言える人が決まっていないと、投稿は動きません。とくに社名で出すアカウントでは、広報や法務の確認が入る会社があります。確認の列が長い会社ほど、投稿までの日数が伸びます。

決めておくとよいのは三つです。承認する人は誰か、その人が見られない週は誰が代わるか、何日以内に返事がなければ予定どおり出すか。三つ目を決めていない会社が多く、返事待ちのまま投稿日を過ぎるという止まり方をします。

投稿の内容ごとに承認の重さを変える方法もあります。日常の投稿は担当者だけで出し、価格や仕様に触れる投稿だけ上位の承認に回す、という分け方です。全部を同じ列に流すと、軽い投稿まで一緒に遅れます。

商品と価格の一次情報は、社外の人が持っていない

代行会社が調べて書けるのは、公開されている情報までです。

在庫の状況、今期に押したい商品、値上げの予定、店頭でよく聞かれる質問、これらは社内にしかありません。渡さないまま任せると、当たり障りのない投稿だけが並びます。見た人が反応しない原因が、代行会社の力量ではなく情報不足だったという例を、引き継ぎの場で何度も見ています。

前の担当者しか知らない決まりごとが残っている場合もあります。この商品は単体で写さない、この色は再現が難しいので使わない、といった社内の申し送りです。文書になっていないことが多く、担当者が代わると一緒に消えます。渡す情報は、担当者の頭の中ではなく、共有できる場所に書き出しておいてください。

月に一度でよいので、社内で決まった予定を代行会社に共有する場を作ってください。来月に押したい商品、休業の予定、入荷の遅れ、この程度の共有でも投稿の中身は変わります。共有がないまま作ると、代行会社は過去の投稿を参考にするしかなく、去年と同じ内容が並びます。

丸投げが向く会社と、社内の作業が残りやすい会社がある

同じ「丸投げしたい」でも、実現しやすさは会社によって違います。

預けやすいのは、商品の入れ替えが少なく、内容を公開されている情報だけで説明できる会社です。写真の在庫があり、価格や仕様が半年単位でしか動かないのであれば、素材と情報を一度まとめて渡せば、しばらくは社内の作業が発生しません。

社内の作業が残りやすいのは、扱う商品が毎月入れ替わる会社、在庫や価格が動く会社、そして承認が何段階もある会社です。この形だと、素材と情報を渡す作業が毎月発生します。任せる範囲を広げるより、渡す作業を短くする方向で考えたほうが、結果として社内の負担は減ります。

自社がどちらに近いかは、過去半年の投稿を思い出せば分かります。投稿のたびに社内へ確認が必要だったなら、その確認は代行会社に変えても残ります。

任せきりに近づけたいなら、契約前に四つ決める

丸投げに近い運用は作れます。社内の作業を減らすのではなく、社内の作業を軽くて短いものに固定するという考え方です。

契約前に決めておく項目は四つあります。素材を出す人と締め切り、承認する人と返事の期限、月の本数、そして投稿の内容をどこまで代行会社の判断で決めてよいか。四つ目は範囲の話です。企画の方向まで任せるのか、案を出してもらって社内で選ぶのかで、社内に残る時間が変わります。

四つ目を曖昧にしたまま「お任せします」と伝えると、代行会社は無難な案しか出せなくなります。任せる範囲が広いほど、渡す情報の量も増えると考えてください。

次にやることは一つです。社内で、素材を出す人と承認する人の名前を紙に書いてください。二つの名前が埋まらないうちは、どこに頼んでも同じところで止まります。