「施工事例をきれいに撮って上げているのに、反応がほとんどありません」。工務店のインスタ集客を担当している方から、こうした相談を受けることがあります。写真の質が低いわけではありません。むしろ、プロが撮った完成写真が整然と並んでいることが多いです。それでも保存も問い合わせも伸びないとき、足りていないのは写真そのものではなく、写真に添える条件の説明です。この記事では、工務店のインスタで何が読まれるのかを整理し、撮影を現場の負担にしないための段取りまでをまとめます。
家を建てる人は、インスタを見た日に決めない
最初に前提を合わせておきます。工務店のインスタは、投稿を見たその日に契約が決まる場所ではありません。家を建てる検討は長く続きます。土地を探している段階、何社か回っている段階、間取りを詰めている段階では、見ている人が知りたいことがまったく違います。
そのため、フォロワーが増えた月に問い合わせが増えるとはかぎりませんし、逆に、半年前に見ていた人が今月来場することもあります。数か月単位で見て判断する必要があります。短い期間の数字の上下だけで、投稿の内容を毎月入れ替えていると、何が効いたのかが分からなくなります。
工務店のインスタに期待できるのは、その場で決めさせることではなく、検討している人の候補に入り続けることです。候補に入るために必要なのは、豪華な家の写真ではなく、「この会社は自分の条件でも建ててくれそうだ」と思える材料です。
完成写真だけでは、見る人が自分の家に置き換えられない
完成写真は、その家がすでに完成しているという事実を伝えます。ところが、見ている人が知りたいのは「自分の場合はどうなるか」です。写真だけでは、その置き換えができません。
置き換えを助ける情報は、写真の外側にあります。どんな広さの土地だったのか、どんな制約があったのか、その制約をどう解いたのか。たとえば、間口が狭い土地でどう明るさを確保したのか、北向きの敷地で日中の光をどう入れたのか、といった話です。こうした説明が写真に添えられていると、似た条件の土地を検討している人が、自分の状況に引き寄せて読めます。
見た目の説明だけで終わっている投稿文は、この置き換えを起こしません。「白を基調とした明るいリビングです」という一文は、写真を見れば分かることを繰り返しているだけです。同じ一文の枠を使うなら、その白い壁を選んだ理由や、その部屋の広さがどんな条件から決まったのかを書いたほうが、読む人の手が止まります。
反応が伸びたのは、土地の条件に触れた投稿だった
住宅の分野でアカウントを見てきた中で、はっきり傾向が分かれた点があります。完成した家の写真を並べた投稿より、土地の条件に踏み込んだ投稿のほうが、保存とプロフィールへの移動が伸びていました。
具体的には、変形した土地の使い方、高低差のある敷地の考え方、法律や条例による制限がある土地で建てられる形、といった内容です。これらは検索して調べにくい内容で、しかも土地を探している段階の人がまさに困っている論点でもあります。似た条件の土地を前にして迷っている人にとって、実際に建てた会社が書いた説明は、一般的な解説より具体的に読めます。
ここで大事なのは、専門的に難しく書く必要がないという点です。むしろ、専門用語をそのまま並べると読まれません。「北側斜線」のような言葉は、初めて出すときに一度だけ意味を開いて、あとは何がどう制限されるのかを普通の言葉で書いてください。読んでいるのは同業者ではなく、これから初めて家を建てる人です。
誰に向けるかを、地域と検討の段階で絞る
工務店の商圏は限られています。全国に届いても、施工できない地域の人が増えるだけです。届く範囲を広げることより、施工できる範囲の人に届くことを優先してください。
そのための方法の一つが、地域の話を投稿の中に自然に入れることです。その地域特有の土地の条件、気候による建て方の違い、地元の分譲地の傾向といった話題は、その地域で土地を探している人にしか刺さりませんが、刺さる人には強く届きます。
検討の段階で分けるのも一つの方法です。土地を探している段階の人に向けた投稿、間取りを考えている段階の人に向けた投稿、会社を絞り込んでいる段階の人に向けた投稿では、書く内容が変わります。すべての段階に一つの投稿で応えようとすると、どの段階の人にも中途半端に届きます。今月はどの段階の人に向けるかを決めてから、投稿の内容を組み立ててください。
撮影を現場の負担にしない段取り
工務店のインスタが続かなくなる理由の多くは、内容の問題ではなく、撮影が止まることです。現場の職人や設計担当は本業があり、撮影は後回しになります。続けるためには、撮る手間を工程の中に組み込んでおく必要があります。
- 撮るタイミングを工程の中に決めておく(基礎、上棟、造作、引き渡し前など)
- 完成写真だけでなく、途中の様子も撮っておく。工事中の写真は完成後には撮れない
- 撮る角度と枚数の型を決めて、毎回同じ形で撮る。考える手間が減る
- 施主に写真を使ってよいか、どこまで写してよいかを、着工前の書面で確認しておく
- 撮った写真の置き場所を一つに決めて、現場からそこに入れる手順にする
四番目は必ず先に済ませてください。引き渡しのあとに口頭で頼むと、断られたときに撮り直しができません。着工前の書類の中に、写真の使用について確認する項目を一つ入れておくと、毎回の確認が仕組みとして回ります。
見る数字は、来場までの距離で選ぶ
工務店のインスタを評価するとき、フォロワー数だけを見ても、来場や問い合わせとの関係が分かりません。見るべきは、来場までの距離が近い順に並べた数字です。
保存された数は、あとで見返したいと思われた印です。プロフィールへ移動した数は、この会社そのものに関心が向いた印です。プロフィールに置いたページへの移動は、さらに一歩進んだ関心です。この三つは、投稿の内容ごとに差が出ます。どの内容のときにプロフィールへの移動が増えたのかを記録しておくと、次に何を書くかの判断材料になります。
そのうえで、来場予約や資料請求の件数を月ごとに見ます。検討期間が長いため、今月の投稿と今月の来場は直接つながりません。半年ほど並べて、投稿の内容を変えた時期と、そのあとの動きを照らし合わせてください。
まずは、直近で反応が良かった投稿を三つ選び、その三つに共通して書かれていた条件の話を抜き出してください。そこで見つかった条件が、次に書く投稿の題材になります。