納品された動画を開くと、横長の画面の中に映像が収まっていました。会社紹介として見る分には問題のない仕上がりでした。リールに出そうとすると、上下に黒い帯が入りました。撮影は終わっていて、撮り直しの予定はありませんでした。
インスタの動画制作を外に頼むとき、費用の話より先に決まっていないと戻りが増えるのは、どこに出すかと、どの形で納品してもらうかです。先に結論を書きます。依頼書に「インスタ用」とだけ書くと、この二つが決まりません。出し先と書き出し(同じ素材から形を変えて出力すること)の指定を、金額を聞く前に決めてください。
インスタの動画制作は、出す場所を決めてから発注します
インスタの中で動画を出せる場所は三つあります。リール、フィードの投稿、ストーリーズです。三つは見られ方が違います。リールはフォローしていない人にも流れます。フィードは主にフォローしている人が見ます。ストーリーズは既にアカウントを知っている人が、短い時間で流し見ます。
同じ内容でも、誰に向けて出すかで作るものが変わります。新しい人に届けたいならリール、既に知っている人に検討してもらいたいならフィード、というように、置き場所を先に決めてください。決まっていないまま動画を一本と頼むと、届いた素材の使い道が納品の後で決まることになります。
既に別の用途で作った動画がある場合は、それを使えるかどうかも先に確かめてください。使えるかは、元の素材が手元にあるかで変わります。編集済みの完成データしか無い場合、縦に作り直すには切り抜きと拡大しかできません。撮影したままの素材が残っていれば、縦向きに組み直せます。制作会社に問い合わせるときは、完成データではなく元の素材の有無を聞いてください。
SNS向けの動画が会社紹介の動画と何が違うかは、SNS用の動画制作は何が違うかに書きました。
一本作れば三か所に出せる、とはなりません
三つの場所は、画面の縦横の比が違います。リールとストーリーズは縦長です。フィードは縦長も正方形も使えますが、プロフィールの一覧に並んだときの見え方が変わります。横長で作った素材を縦の場所に出すと、上下に余白が出ます。余白を埋めるために後から拡大すると、左右の端が切れます。
図1 横長の完成データを縦の画面に出したときの二通り(模式図)
尺(動画の長さ)も違います。ストーリーズは一つの区切りが短く、長い動画は自動で分割されます。分割されると、話の切れ目と区切りの位置が合いません。ストーリーズに出す前提があるなら、区切りの位置を編集の段階で決めておく必要があります。
依頼するときは「縦の書き出しを一本」ではなく、「リール用に縦を一本、フィード用に別の比率で一本、ストーリーズ用に区切った版を一本」のように、必要な数を数えて伝えてください。同じ撮影素材から書き出す分には、撮り直しは発生しません。数え忘れて後から足すと、編集の追加作業として金額が動きます。
文字の位置は、画面のふさがる場所で決まります
リールとストーリーズは、画面の上と下にボタンや投稿文が重なります。右側にもボタンが縦に並びます。編集ソフトの画面では中央に見えていた文字が、実際のアプリではボタンの下に隠れることがあります。
図2 リールとストーリーズで、画面がふさがる場所(模式図)
やることは二つです。一つは、文字を画面の中央寄りに置くよう、依頼のときに指定することです。もう一つは、公開前に自分のアカウントで下書きの手前まで進めて、実際の画面で確認することです。確認は公開しなくてもできます。ここを飛ばすと、公開してから隠れていることに気付き、差し替えになります。
差し替えは、単に手間が増えるだけではありません。公開済みの投稿を消して出し直すと、それまでに付いた反応も一緒に消えます。
音は、納品データの外で付く部分があります
インスタで動画を見る人の中には、音を出さない人がいます。話している内容が伝わる必要があるなら、字幕を入れてください。音が無くても意味が通る状態を、納品の条件に書いておきます。
音楽の扱いには、先に決めておく点があります。アプリの中で選べる音源は、投稿するときにアプリ側で付けます。編集の段階で音楽を焼き付けてしまうと、後から差し替えられません。また、アカウントの種類によって、アプリの中で選べる音源の範囲が変わることがあります。自分のアカウントで実際に画面を開き、使える範囲を確かめてから、音楽をどちらで付けるかを決めてください。
外部で用意した音楽を使う場合は、使ってよい範囲の確認が要ります。制作会社が用意するのか、自社で用意するのか、仕事で使える契約になっているのかを、発注の時点で書面にしておいてください。
金額を動かすのは本数より、撮影日の数と出し先の数
何本でいくらかという聞き方から入ると、返ってきた金額を比べにくくなります。金額を動かしているのは、次の三つです。
一つめは、撮影日の数です。一日で何本分の素材を撮るかによって、同じ本数でも人が動く日数が変わります。まとめて撮れる内容か、季節や在庫の都合で日を分ける必要があるかで、ここは変わります。
二つめは、出し先の数です。同じ撮影から何種類の書き出しが必要かで、編集の作業量が変わります。比率違い、尺違い、字幕の有無で数えてください。
三つめは、修正の回数です。何回までを金額に含むか、それを超えたらどうなるかを、最初に決めておいてください。決まっていないと、追加になったのか含まれているのかで話が止まります。
見積もりを頼むときは、どこまでを頼むかも伝えてください。手元の素材を編集だけしてもらうのか、企画と台本から頼むのか、撮影から頼むのかで、相手が見積もる作業が変わります。範囲を書かずに頼むと、返ってきた金額を並べても、同じ作業に対する金額かどうかが分かりません。
見積書の項目が何を指しているかは、動画制作の見積もりを読み解くに整理しました。
撮影した素材と、広告に使う範囲を契約で決めておきます
撮影から頼む場合は、何が納品されるのかを決めます。完成した動画だけなのか、撮影したままの素材も引き渡されるのかです。最初の節に書いたとおり、後から縦向きに組み直せるかどうかは、元の素材が手元にあるかで変わります。素材の引き渡しを契約書に書いておかないと、別の形に作り直したくなったときに、自社の手元には完成データしか残りません。
インスタに出した動画を広告にも使う予定があるなら、それも発注の時点で伝えてください。広告に使ってよいか、使うときに追加の費用がかかるかは、契約の中身で変わります。人が出演している動画は、出演した人がどこまでの使い方を了解しているかも確かめておく必要があります。
台本を作ってもらう場合は、撮影の前に社内で台本を確かめる日を予定に入れてください。撮影が終わってから話の中身を変えたくなると、撮り直しになることがあります。
契約書のどこを読めばよいかは、SNS運用代行の契約書で確認する条項に、著作権の扱いを含めてまとめました。
依頼のときに渡すものと、決めておく項目
発注の前に、社内でそろえておくものがあります。ロゴのデータ、使ってよい色、過去に出した投稿で反応がよかったもの、映してはいけないもの、出演する人と撮影日の候補です。これらが無いまま始めると、最初の一本を作っている最中に社内の確認が何度も挟まります。止まる場所は撮影ではなく、社内の確認であることが多いです。
決めておく項目は七つです。出し先がリールとフィードとストーリーズのどれか、それぞれの比率と尺、字幕を入れるか、音楽をどちらが用意するか、修正の回数、撮影した素材を引き渡してもらうか、広告にも使うかです。この七つを書いた紙を持って見積もりを頼むと、返ってきた金額が何に対する金額かが読めます。
まずは直近で出したい動画を一本選んで、出し先を決め、必要な書き出しがいくつになるかを数えるところから始めてください。