「投稿のときは保存がよく付いた画像なのに、広告に回したら止まりました」という相談を受けたことがあります。

インスタ(Instagram)のカルーセル広告とは、複数枚の画像を横に送って見せる形の広告です。見た目は通常のカルーセル投稿とほとんど同じです。それでも結果が変わるのは、届く相手が違うからです。投稿はその会社をすでに知っている人に届きますが、広告は名前も知らない人に届きます。前提を共有していない人が最初の1枚を見て、そこで送るのをやめます。同じ素材をそのまま出すと、この差が数字に出ます。

通常の投稿と広告では、見ている人が違います

通常の投稿を見るのは、フォローしている人と、似た投稿をよく見ている人です。会社の名前も、何を売っているかも、ある程度は伝わった状態で1枚目を見ます。だから1枚目に商品名だけを置いても、話の続きとして読まれます。

広告はそうなりません。広告で表示される相手は、配信先の絞り込み条件に当てはまっただけの人です。その会社を見たことがなく、何の話が始まるのかも分かりません。1枚目が社名とロゴだけだと、自分に関係のない話だと判断されて指で送られます。

受託の現場でも、通常の投稿で反応が良かったカルーセルをそのまま広告に回して、成果が落ちた例を何度も見ています。素材が悪かったのではなく、前提を共有している人向けの1枚目を、共有していない人に見せていたことが原因でした。

反応が良かった投稿をそのまま広告に回す進め方自体は、悪くありません。作り直す手間がかからず、社内の確認も速く済みます。ただし1枚目だけは、広告用に差し替えてください。2枚目以降はそのままでも成立することが多く、直す場所は1枚目に集中します。

SNS運用の基礎を4回のメールにまとめています
この記事で触れた指標の見方や、外注先の選び方をまとめた資料を無料で送ります。
講座の内容を見る

1枚目には、誰に向けた話かを書きます

広告の1枚目でやることは一つです。読む人が「これは自分に向けられた話だ」と分かる状態にすることです。

具体的には、対象になる人の状況を1枚目に書きます。業種でも、抱えている困りごとでも、置かれている場面でもかまいません。「◯◯をしている方へ」のような呼びかけの形でも成立します。商品名や会社名を大きく置くより、相手の側の話から入ったほうが、2枚目まで送られます。

1枚目に情報を詰め込む必要はありません。読む人は指で送りながら見ているので、立ち止まる時間はごく短いです。文が長いと読まずに送られます。1枚目は短い一文と、それが分かる画像で足ります。

2枚目以降は、途中で終わっても成立する順番にします

カルーセル広告は、最後の1枚まで送られない前提で作ります。3枚目で離れる人も、2枚目で戻る人もいます。

そのため、話を最後まで読まないと意味が通らない構成にはしません。1枚に1つだけ内容を置き、その1枚だけを見ても何かが分かる形にします。順番に積み上げる説明にすると、途中で離れた人には何も残りません。

伝えたいことが複数あるなら、優先順位の高いものを前に置きます。最後の1枚に一番言いたいことを置く構成は、通常の投稿では成立しますが、広告では届かない人が増えます。

図1 一番言いたいことを置く場所で、届く人の数が変わる

ここで送るのをやめる人がいます 最後に結論を置く構成 誰向けか 説明 説明 結論 途中で離れた人に、結論は届きません 大事な順に置く構成 誰向けか 結論 理由 補足 2枚目で結論を見ているので、途中で離れても残ります
線より右の箱は、そこで止まった人には1枚も見えません。枚数を増やしても線の位置は動かず、右側に置かれる箱が増えるだけです。

枚数を増やせば伝わる量が増えるかというと、そうではありません。枚数が増えるほど、最後まで送る人の割合は下がります。通常の投稿で枚数を決める考え方はカルーセル投稿の枚数と構成の決め方にまとめています。伝えたいことを削れないときは、1本にまとめず、対象ごとに分けて別の広告にするほうが、それぞれの1枚目を相手に合わせられます。

同じ理由で、1本のカルーセルの中で話題を切り替えないでください。前半が価格の話で後半が使い方の話だと、価格を知りたくて見始めた人が後半で離れます。1本のカルーセルで扱う話題は一つに絞ります。

広告マネージャで作るときは、並び順の設定を確かめます

カルーセル広告は、Metaの広告マネージャで広告を作る途中、広告の形式を選ぶ欄で「シングル画像または動画」ではなく「カルーセル」を選ぶと作れます。横に送る1枚ずつを「カード」と呼び、カードを追加しながら、1枚ごとに画像、見出し、リンク先を入れていきます。通常のカルーセル投稿は1本に投稿文が1つ付くだけですが、広告ではカードごとに別の見出しとリンク先を付けられます。商品を1枚に1つずつ並べ、それぞれの商品ページへ送る使い方ができるのはこのためです。

作るときに見落としやすいのが、カードの並び順を自動で入れ替える設定です。広告マネージャには、成果の高いカードを自動的に最初に表示する設定があり、はじめからオンになっていることがあります。オンのままだと、前の節のとおり大事な順に並べても、並べた順とは違う順で表示されることがあります。

図2 広告を作る画面で確かめる3つの欄(模式図)

広告の形式 シングル画像または動画 カルーセル カード 1 2 3 + カードを追加 画像 見出し リンク先 リンク先はカードごとに別のページを入れられます 成果の高いカードを自動で最初に表示する
項目名と置き場所は画面の版によって変わります。この図の文言どおりに探さず、カードの欄の近くにある並び順に関するチェックを探してください。

1枚目に誰向けかを書き、2枚目に結論を置くという順番で組んだ広告は、この設定をオフにしてから出してください。商品を並べただけで順番に意味がない広告なら、オンのままでもかまいません。オンにしている間は、1枚目に出るカードが並べた順のとおりではなくなるので、後の節で書く「何枚目で送るのをやめたか」を比べるときもその前提で読んでください。

画像に入れる文字は、小さい画面で読める量に絞ります

広告は画面の小さい端末で見られます。パソコンの画面で作った文字量は、実際の表示では読めないことがあります。作った画像を自分の携帯電話で開いて、腕を伸ばした距離から読めるかを確かめてください。読めなければ文字が多すぎます。

図3 同じ大きさの画像でも、行数で1行の文字の大きさが変わる

文字を詰めた画像 文字を絞った画像 作った画面ではなく、自分の携帯電話で開いて確かめます
線は文字の行を表しています。枠の大きさは同じなので、行数を増やすほど1行に使える高さが減ります。文字を大きくしたいなら、行数を減らすしかありません。

行動を促す一文も、画像の中に大きく入れる必要はありません。広告には行動を促すボタンが別に付きます。画像の中とボタンの両方で同じことを言うと、画像側の場所を無駄に使います。

なお、広告は配置される場所によって、画像の見える範囲や一緒に表示される文章の長さが変わります。1つの画像を作って全部の場所に出すのではなく、主に出す場所を決めてから、その形に合わせて作ってください。

判断は、どこで送るのをやめたかで見ます

カルーセル広告で最初に見るのは、表示された回数ではありません。何枚目まで送られたかと、そこから先に何人が進んだかです。

1枚目で止まっているなら、直すのは1枚目です。2枚目以降まで送られているのに先に進まないなら、中身の順番か、示している行動の内容を見直します。この二つは原因が別なので、同時に両方を変えると、どちらが動いたのか分からなくなります。

もう一つ気をつけたいのは、判断を急がないことです。表示された件数が少ないうちの数字は、日によって大きく振れます。件数が溜まるまでは、良いか悪いかを決めずに出し続けてください。

社内に報告するときも、表示された回数だけを持っていかないでください。表示回数は配信に使った金額でほとんど決まるので、素材の良し悪しを説明できません。何枚目まで送られたかと、その先で起きた行動の件数を並べて出すと、次に何を直すかまで一緒に話せます。

出す前に、社内で決めておくこと

広告を出す前に、次の五つを社内で決めておくと、後の判断が速くなります。

  • 誰に向けるか。業種、地域、抱えている困りごとのどれで絞るかを言葉にする
  • 1枚目に置く一文。会社名ではなく、相手の状況を書く
  • 何枚出すか。多く作るほど制作の手間が増えるので、最初は少なくてよい
  • 送った先で何をしてほしいか。問い合わせなのか、資料の閲覧なのか、来店なのかを一つに決める
  • いつ判断するか。何日か、何件たまったらかを先に決めておく

これらを決めずに始めると、数字が出たあとに「何を直すか」で社内の意見が割れます。決めておけば、直す場所を数字から選べます。

まず、直近で出したカルーセル広告を開いて、1枚目に書いてある文を声に出して読んでみてください。その一文で、自分の会社を知らない人が自分ごとだと分かるかどうかが、最初に直す場所です。