「投稿の運用はお願いしているので、広告もそのまま任せていいですか」。担当者の方から、こう聞かれることがあります。同じインスタの中の話ですから、今の作業の続きに見えます。しかし、広告の運用代行と、日々の投稿を作って出す運用代行は、決めることも、確認することも、お金の流れも違います。
先に結論を書きます。広告の運用代行を頼むときに最初に決めるべきなのは、月にいくら払うかではなく、広告アカウントと支払い方法を誰の名義で持つかです。ここを決めないまま始めると、契約が終わったときに、それまでの配信の記録が自社の手元に残りません。この記事では、広告の運用代行という言葉が指している仕事の中身と、任せる範囲の切り方、そして始める前に決めておく項目を整理します。
投稿の運用代行と、広告の運用代行は別の仕事です
日々の投稿を作って出す仕事は、広告をかけない通常の投稿で読まれることを目指します。誰に届くかは自分では決められません。フォローしている人と、おすすめに表示された人に向けて、内容の力で読んでもらう形です。
広告は逆です。お金を払って、こちらが決めた条件の人に表示させます。年齢、住んでいる地域、関心のある分野といった条件を自分で指定します。届く量は、かけた金額でおおよそ動きます。内容が良くても金額を止めれば届きませんし、金額を出せば内容が弱くても表示だけはされます。
この違いがあるため、うまくいっているかどうかの見方も変わります。通常の投稿では、保存された数やプロフィールへ移動した数を見て、内容が読まれたかを判断します。広告では、1回表示するのにいくらかかったか、1件の申し込みを取るのにいくらかかったかを見ます。同じ会社に両方を頼むとしても、報告書は分けて出してもらったほうが、どちらの結果を見ているのかが混ざりません。
広告の運用代行が実際にやっている作業
広告の運用代行という言葉は、実務では次の作業のまとまりを指しています。見積書を読むときは、このうちどれが含まれているのかを見てください。
- 誰に見せるかの設定(年齢や地域、関心の条件を決める作業)
- 広告に使う画像や動画の用意
- 広告文の作成
- 広告の入稿と、配信の開始
- 配信中の日々の調整(反応の悪い広告を止める、良い広告に予算を寄せる)
- 結果の集計と報告
この中で、社外に出すかどうかで意見が分かれやすいのが、画像や動画の用意です。運用の作業だけを請けて、素材は自社で用意してくださいという形もありますし、素材の制作から請ける形もあります。前者で契約すると、配信を始めたあとで「反応が悪いので差し替えたい」となったときに、社内で作る人の手が空いていないと止まります。
もう一つ、意外と抜けやすいのが、広告からの問い合わせに誰が答えるかです。広告を見て届いたコメントやメッセージへの返信は、広告の運用の中に入っていないことが多い作業です。誰が、どのくらいの速さで返すのかを、始める前に決めておいてください。
支払いは「手数料」と「広告費」の二つに分かれます
広告を外に頼むと、お金の出口が二つになります。一つは代行会社に払う手数料で、もう一つは広告費そのものです。広告費は最終的にSNSの運営会社に払うお金で、代行会社の売上ではありません。
見積書を見るときは、書かれている金額がどちらなのかを確認してください。手数料だけが書かれていて広告費が別なのか、両方の合計が書かれているのかで、実際に出ていく金額が変わります。
手数料の決まり方には、毎月の定額で決める形と、広告費に対する割合で決める形があります。どちらでも構いませんが、割合で決める場合は、広告費を増やすと手数料も増える関係になります。増やすかどうかを判断するときに、その関係を頭に入れておいてください。
当社の場合の金額を、事実として並べておきます(2026年8月時点・税別)。広告の運用は月額で、3ヶ月以上の継続でお預かりする場合が90,000円、都度のご依頼が108,000円です。この中に、設計、入稿、日々の調整、レポートが入ります。広告費そのものはこれとは別で、実費をお預かりして全額を配信に充てます。広告に使う画像や動画を追加で作る場合は、1点あたり、継続の場合が21,000円から、都度の場合が25,000円からです。
アカウントと支払いの権限は、自社側に置いてください
広告アカウントは、自社の管理画面(Metaのビジネス設定)の中に作り、代行会社にはそこへ入る権限を渡す形にしてください。支払いに使うカードも自社名義で登録します。代行会社が自分たちのアカウントの中に自社の広告を入れて回す形もありますが、その場合、契約が終わったときに配信の記録が自社に残りません。
この差が出るのは、次に別の会社に頼むときです。過去にどの条件の人に配信して、どの画像の反応が良かったのかという記録は、同じ広告アカウントの中に蓄積されています。アカウントごと引き継げれば、次の担当者はその記録を読んでから始められます。アカウントが手元になければ、また何もない状態から試すことになります。
引き継ぎの場面に立ち会うと、この違いははっきり出ます。アカウントが自社側にある場合は、権限を付け替えるだけで数日のうちに配信を再開できました。手元になかった場合は、アカウントを作り直し、支払い方法を登録し直し、条件を一から設定するところからやり直しになりました。作り直した記録は過去とつながらないため、以前どの広告が良かったのかを数字で確かめることもできません。
見る数字は、件数がたまってから判断してください
広告の報告書には、表示された回数、押された回数、申し込みに至った件数と、それぞれの単価が並びます。ここで起きやすいのが、少ない件数で結論を出してしまうことです。
申し込みが月に数件しかない段階では、1件あたりの金額は大きく上下します。たまたま1件多い月があれば単価は下がりますし、1件少なければ跳ね上がります。この上下を見て毎週設定を変えていると、何が結果を動かしたのかが分からなくなります。
対策は単純です。判断するのは何件たまってからか、期間で言えば何週間見てからかを、始める前に決めておいてください。そして、その期間の途中では、明らかに反応がない広告を止める以外の変更をしないと決めておきます。変えるものを一度に一つに絞ると、次の月に読める材料が残ります。
始める前に決めておく六つの項目
契約書や発注書に入れる前に、社内で答えを出しておく項目を挙げます。
- 目的をどちらにするか(申し込みや購入を取るのか、知ってもらう範囲を広げるのか)
- 期間と、途中で止める条件
- 1ヶ月の広告費の上限
- 広告に使う画像や動画を、どちらが用意するか
- 広告から届いたコメントやメッセージに、誰が答えるか
- 広告アカウントと支払い方法を、どちらの名義で持つか
このうち二番目は、決めずに始めると止められなくなります。「あと1ヶ月やれば変わるかもしれない」という話が毎月続くためです。開始前に、どの数字がどこまで動かなかったら止めるのかを書いておいてください。
まずは、自社の管理画面に広告アカウントがあるかどうかを確認してください。以前に単発で広告を出したことがある会社なら、すでに存在していることがあります。無ければ、代行会社に依頼する前に自社名義で作っておくと、権限の話が最初から片付きます。