「投稿は止まっていないのですが、この一年で何が良くなったのかを説明できません」と、企業の担当者から相談を受けたことがあります。投稿本数は毎月きちんと積み上がっていて、社内の承認も回っていました。それでも手応えがない、という状態です。
先に結論を書きます。この状態のときに投稿の中身を変えても、たいてい何も変わりません。変えるべき場所は、投稿より手前と後ろにあります。手前はプロフィールと投稿の型、後ろは数字の見方と担当の置き方です。企業のインスタアカウント運用は、始めたときに決めた設定のまま何年も走ります。半年に一度、その設定を人が見に行かないと、ずれたことに誰も気づきません。
この記事では、運用中のアカウントを点検する手順を書きます。新しく始める話ではなく、すでに動いているアカウントを止めずに見直す話です。
手応えがないとき、最初に見るのは投稿の中身ではありません
担当者が最初に疑うのは、たいてい投稿の内容です。デザインが古いのではないか、企画が弱いのではないか、と考えます。ただ、内容の良し悪しは主観が入りやすく、社内で意見が割れて止まります。
先に見るのは、投稿が「誰にどこまで届いたか」の段階です。インスタの数字は、見られた回数、保存された回数、プロフィールを見に来た人数、というように段階に分かれています。どの段階で落ちているかで、直す場所が変わります。
見られた回数が少ないなら、内容ではなく届き方の問題です。見られてはいるのに保存もプロフィール訪問も起きていないなら、内容が届いた相手に合っていない可能性があります。プロフィールまでは来ているのに、その先で何も起きていないなら、問題は投稿ではなくプロフィールにあります。
段階を分けずに「反応が悪い」とまとめてしまうと、直す場所が決まりません。点検は、この分解から始めます。
プロフィールと固定投稿を、初めて見る人の目で読む
投稿を見た人が次に開くのはプロフィールです。ここは開設時に書いたまま放置されていることが多く、点検で一番よく直る場所でもあります。
見るのは四つです。一つ目は、何をしている会社かが一行で分かるか。社名と業種名だけが並んでいて、何を売っているのかが書かれていないアカウントは珍しくありません。二つ目は、リンク先が生きているか。キャンペーン用のページのまま終了していたり、スマホで開くと崩れるページのままだったりします。三つ目は、固定している投稿が今の主力と合っているか。四つ目は、ハイライトの分類が増えすぎていないか。
受託の現場で実際にあったのは、リンク先が会社のトップページのままになっていて、投稿で紹介した商品のページまで四回タップしないと着かない状態でした。投稿は毎月出ていましたが、着いた先で人が離れていました。この場合、投稿を変えても数字は動きません。
自社の担当者は、自社のプロフィールを毎日見ているので違和感に気づけません。社内の別部署の人か、外の人に一度見てもらうと、抜けが早く出ます。
直近の投稿を、型ごとに数える
次に、直近の投稿を一覧で並べて、型ごとに分類します。型というのは、投稿の作り方のパターンのことです。商品紹介、使い方の説明、社内の様子、お客さまの声、告知、といった具合に、自社の投稿がいくつのパターンで出来ているかを数えます。
ここで起きやすいのは二つです。一つは、型が増えすぎて、どれが効いたのか比べられなくなっている状態。担当者が変わるたびに新しい型が足され、整理されないまま並んでいることがあります。もう一つは逆に、型が一つしかなく、同じ形が延々と続いている状態です。
分類したら、型ごとに数字をまとめます。投稿を一本ずつ見ると、たまたま伸びた回に引っ張られて判断を誤ります。同じ型の投稿を五本以上まとめて平均を見ると、どの型が自社で機能しているかが見えます。
この作業をすると、社内で一番評判の良い型と、数字が付いてくる型が違うことがよくあります。評判が良いのは社内の関係者に見られている投稿で、数字が付くのは社外の人が保存する投稿です。両方を出すこと自体は問題ありませんが、どちらがどちらかを分かった上で配分を決めます。
数字を見る単位と頻度を決め直す
点検では、数字の見方そのものも対象にします。多くの企業アカウントは、月末にまとめて数字を見ています。この頻度自体は妥当ですが、見る単位が投稿一本ずつになっていると、毎月の報告が「今月はこれが伸びました」の羅列で終わります。
見る単位を、投稿から型に変えます。型ごとの平均で比べると、来月に何を増やして何を減らすかが決まります。次の月の投稿計画に直結する形で数字を持つ、ということです。
同時に、追いかける指標の数も点検します。指標を五つも六つも並べて毎月報告していると、全部が少しずつ動いて、結局どれを重く見るのかが決まりません。目的に合わせて主に見る指標を一つか二つに絞り、残りは参考として置きます。認知を広げたいのか、既に知っている人の検討を進めたいのかで、選ぶ指標は変わります。
権限と担当が、いまの体制と合っているか
最後に、アカウントの管理まわりを見ます。ここは数字の話ではありませんが、点検で放置すると、後で直すときの手間がいちばん大きくなります。
見るのは、管理権限を持っている人の一覧です。退職した人のアカウントが管理者に残っていないか、外部の協力会社に渡した権限が終了後も残っていないか、逆に自社の誰も最上位の権限を持っていない状態になっていないかを確認します。運用を外に出している場合、アカウント自体の持ち主は自社側に置いておきます。
もう一つは、投稿までの確認の道すじです。承認する人が増えすぎて、投稿までに一週間かかるようになっていないか。承認者が不在のときに代わりに出せる人が決まっているか。この二つが詰まっていると、どれだけ良い企画を立てても出るのが遅れます。
担当が一人に集中している場合は、その人が抜けたときに何が止まるかを書き出しておきます。素材の置き場所、投稿文の型、パスワードの管理場所、この三つが個人の手元にあると、引き継ぎの時点で運用が一度止まります。
点検の結果から、次の半年に決めること
点検を終えたら、直す項目を三つまでに絞ります。全部を同時に変えると、何が効いたのか分からなくなります。プロフィールの直しは一度で済むので先に片付け、投稿の型は一つだけ増やすか減らすかにとどめ、次の半年で比べられる状態にします。
そして、次に点検する日をカレンダーに入れておきます。点検は思い出したときにやると、たいてい二度目が来ません。半年後の日付を先に押さえておくと、その間の投稿は迷わず走らせられます。
いま自社のアカウントを開いて、プロフィールのリンク先を一度タップしてみてください。投稿で案内している場所に、何回のタップで着くかを数えるところからで構いません。