「運用をお願いしたら、動画も作ってもらえますか」という質問を、初回の打ち合わせでほぼ毎回受けます。

先に結論を書きます。SNS運用代行(投稿の企画から公開までを社外に預ける契約)と動画制作は、同じ会社が請けていても契約上は別の作業です。まとめるか分けるかは、金額の合計ではなく、動画を月に何本使うか、その動画を他の場所でも使うかで決まります。本数が少なくて用途がSNSだけなら、まとめたほうが社内の手間は減ります。本数が多い、あるいは展示会や営業資料でも使うなら、分けたほうが後で困りません。

運用代行と動画制作は、契約上は別の作業です

一社に頼んでいると同じ作業に見えますが、金額の決まり方が違います。

運用代行は、月にいくらという決め方が普通です。投稿の企画、投稿文の作成、投稿する日の組み立て、公開、数字の集計と報告といった、毎月同じ形で繰り返す作業が中身になります。作業の量は月ごとに大きく変わりません。

動画制作は、一本いくら、あるいは月に何本でいくらという決め方になります。撮影に行くか行かないか、出演者がいるかいないか、素材が揃っているかで、一本にかかる時間が何倍も変わります。月額の中に溶かし込むと、この差が見えなくなります。

見積書に「SNS運用代行 一式」とだけ書かれていて、動画の本数が書かれていない場合は、必ず内訳を聞いてください。何本まで含むのか、超えたら一本いくらかを確認しないと、増やしたい月に話が止まります。

SNS運用の基礎を4回のメールにまとめています
この記事で触れた指標の見方や、外注先の選び方をまとめた資料を無料で送ります。
講座の内容を見る

まとめて頼むと短くなるのは、素材のやり取りの回数

一社にまとめる利点は、金額よりも社内の手間の側にあります。

分けて頼むと、素材を渡す先が二つになります。制作会社に撮影の素材を渡し、運用の会社には出来上がった動画と投稿文の材料を渡す。この二重の受け渡しが、毎月発生します。受託の現場で投稿が遅れる原因はほとんどが素材の受け渡しなので、渡し先が一つ減るだけで、止まる回数は目に見えて減ります。

もう一つは、投稿の反応を次の動画に返しやすい点です。運用と制作が同じ会社の中にあると、保存された数や最後まで見られた割合を見て、次の動画の冒頭のつかみ(見た人が指を止める最初の一、二秒)を変える判断が、社内の会話で終わります。分かれていると、その判断を発注側が言葉にして伝える作業が必要になります。

ただし、一社にまとめたからといって、このやり取りの短さが自動的に手に入るわけではありません。同じ会社の中でも、運用の担当者と編集の担当者が別で、連絡が発注側を経由している体制もあります。契約前に、動画の内容を誰が決めるのかを聞いてください。

分けて頼むほうが向くのは、動画を他でも使う会社

まとめないほうがよい場合もはっきりしています。

一つは、作った動画をSNS以外でも使う会社です。展示会のブースで流す、営業の資料に入れる、採用の説明会で見せる。こうした使い方をするなら、動画は運用の月額の中ではなく、制作物として単独で発注したほうが管理しやすくなります。使い回しの範囲を契約に書きやすく、後で運用代行をやめても動画が手元に残ります。

もう一つは、動画の本数が多い会社です。月に十本を超えるあたりから、制作の作業量が運用の作業量を上回ります。運用の月額に含めたままだと、本数が増えた月に何が起きているのか、発注側からは見えません。制作を別の枠にしておけば、増減がそのまま金額に出ます。

三つ目は、撮影の頻度が高い会社です。毎月現場に来てもらうなら、撮影のできる会社を軸に選ぶことになります。運用を得意とする会社が撮影も請けているとは限りません。順番として、撮影の要件を先に決めてください。

分けて頼むなら、受け渡しと使える範囲を先に決める

制作と運用を別の会社に頼むと決めたら、契約の前に三つ決めてください。決めていないと、二社の間に自社が挟まって作業が増えます。

一つ目は、出来上がった動画を誰が受け取るかです。制作会社から自社に納品して自社が運用会社に渡すのか、制作会社から運用会社に直接渡してよいのか。直接渡してよい場合は、そのことを両社に伝えて、共有フォルダを一つ決めてください。自社が毎回中継すると、投稿の前日に転送作業が入ります。

二つ目は、納品する形式です。運用会社が投稿に使う縦の画面の動画と、展示会や資料で使う横の画面の動画では、書き出しの設定が違います。両方必要なら、制作の発注の時点で伝えてください。後から追加すると、書き出し直しの費用と日数がかかります。

三つ目は、動画を使える範囲です。SNSに出すだけなのか、広告として出稿してよいのか、いつまで使えるのか。出演者を立てた動画では、出演者との取り決めが期限付きになっていることがあります。運用会社が広告として出そうとしたときに、その動画は使えないと分かる、という止まり方をします。

三つとも、契約書の文言というより、最初の打ち合わせでの確認事項です。二社の担当者を一度同じ場に呼べるなら、その場で決めてしまうのが早くなります。

途中から動画制作を足すときに起きること

写真の投稿だけで運用を始めて、半年後に動画を足したいという相談は多くあります。このとき、いくつか決め直しが必要になります。

まず、月の本数の内訳が変わります。写真の投稿を減らして動画に振り替えるのか、全体の本数を増やすのか。ここを決めずに「動画も足したい」とだけ伝えると、運用会社は判断できません。

次に、素材を出す作業が社内で増えます。写真は在庫から出せても、動画は撮り直しが必要になることがほとんどです。誰が撮るのか、社内のスマートフォンで撮るのか、撮影を頼むのか。この決定が遅れると、動画の月だけ投稿が薄くなります。

三つ目は、承認の回り方です。動画は、写真より確認に時間がかかります。音が入り、話す内容が入り、修正の指示も細かくなります。写真の投稿と同じ承認の期限で回すと、間に合わない月が出ます。動画だけ承認の締め切りを前倒しにしてください。

決める前に、社内で数えておく三つの数字

まとめるか分けるかを判断するために、社内で数えておく数字が三つあります。

一つ目は、月に必要な動画の本数です。感覚ではなく、投稿する予定日を書き出して数えてください。二つ目は、そのうち撮影が必要な本数です。手元の素材で作れる分と、撮りに行かないと作れない分を分けます。三つ目は、SNS以外で使う予定の本数です。ここがゼロなら、まとめる選択が有力になります。

三つを数えたうえで、候補の会社に同じ前提で見積もりを出してもらってください。運用と制作を一つの月額にした場合と、分けた場合の両方を出せる会社もあります。両方を並べれば、どこに金額が乗っているのかが見えます。

まず、来月出す予定の投稿を紙に書き出して、動画が何本必要かを数えるところから始めてください。その数字がないまま相談すると、どの会社からも「本数によります」という返事しか返ってきません。