「動画は作ってもらっているのですが、出すところで止まっています」。ショート動画の相談で、こう言われることがあります。編集の終わった動画が社内の共有フォルダに何本も残っていて、投稿されないまま日が過ぎている、という状態です。
先に結論を書きます。ショート動画の運用代行(作る作業だけでなく、出す・数字を見る・次を決めるところまでを月ごとに請け負う契約のことです)を頼むとき、最初に確かめるべきなのは月額ではありません。投稿する操作を、どちら側の人の手が動かすのかです。ここが決まっていない契約は、動画が納品された時点で止まります。この記事では、運用代行という言葉に何が含まれているのか、制作だけを頼むと社内に何が残るのか、そして契約前に決めておく項目を順に書きます。
「運用代行」に含まれる作業は、会社ごとに違います
同じ「ショート動画の運用代行」という名前でも、実際に請けている範囲は三つに分かれます。
一つ目は、制作だけを請ける形です。素材を預かって編集し、動画ファイルを納品して終わります。二つ目は、制作に加えて投稿までを請ける形です。投稿文を書き、日時を決め、アカウントを操作して公開します。三つ目は、そこに数字の集計と次の月の企画までが乗る形です。出した動画の反応を集計して、続ける型と止める型を決めます。
見積書の項目名だけでは、この三つを見分けられません。「ショート動画運用 月◯本 ◯◯円」と一行だけ書かれている見積書は珍しくないためです。この一行が制作だけを指しているのか、投稿までを含んでいるのかは、書いた会社に聞かないと分かりません。問い合わせの段階で、動画ファイルを渡した後の作業がどこまで含まれるかを確認しておくと、あとで作業の押し付け合いになりません。
制作だけを頼むと、社内には投稿までの作業が残ります
制作だけの契約にした場合、自社に残るのは次の作業です。
- 納品されたファイルを受け取り、内容を確認する
- 投稿文(投稿につける本文とタグ)を書く
- 出す日と時間を決める
- アカウントを開いて投稿の操作をする
- 投稿後のコメントとメッセージに一次対応する
一つずつは短い作業です。ただ、これらは動画が納品されるたびに毎回発生します。受託の現場で見ていると、動画が溜まる会社には共通点があります。作る人がいないのではなく、公開してよいと判断できる人が一人しかいない、という状態です。その一人が出張や繁忙期に入ると、確認の列がそこで止まり、動画は共有フォルダに積み上がっていきます。作る量を増やしても、この列は短くなりません。
金額の目安として、当社の場合を挙げます。2026年8月時点・税別で、リール1点(素材をご支給いただき、編集のみを行う場合)は、その月の制作点数が1〜3点のときに22,000円です。投稿の操作は制作とは別の扱いで、「進行管理・ご確認依頼・投稿作業」という項目を選んでいただく形になり、選んだ項目が1〜2個の場合は18,000円です。項目を三つ以上まとめて選ぶかどうかで単価の区分が変わります。制作の単価も、その月の合計点数(月1〜3点/4〜7点/8点以上)で区分が変わります。他社の金額は分かりませんので、比較の材料としてではなく、範囲の切り方が金額の項目にどう表れるかの例として読んでください。
出す先を増やすと、増える作業と増えない作業があります
ショート動画は、リール、TikTok、YouTubeショートの三つに同じ縦の動画を出せます。三つに出すと手間が三倍になるかというと、そうはなりません。
増えないのは、撮影と編集の元になる部分です。企画を考え、素材を撮り、切ってテロップを入れる作業は一回で済みます。
増えるのは、その先です。SNSごとに投稿の操作が要ります。投稿文とタグは書き分けたほうがよく、冒頭のつかみも同じで通らない場合があります。数字を見る場所も三か所に分かれるため、集計の手間はそのまま増えます。加えて、他のSNSのロゴが画面に写り込んだ動画は伸びにくいという扱いを受けるため、書き出しの段階で分けておく必要があります。尺の上限や使える音源も同じではありません。
見積もりを取るときは、出す先の数を先に伝えてください。一つ分の金額に後から二つを足すと、投稿と集計の作業だけが漏れることがあります。
コメントとメッセージの一次対応は、別に線を引きます
投稿までを頼んだ場合でも、公開した後に届くコメントとメッセージへの対応は、自動的には含まれません。ここは制作や投稿とは性質が違い、会社として何を答えてよいかの判断が入るためです。
線の引き方は二段になります。定型で返せるものと、そうでないものです。営業時間や場所の問い合わせ、過去の投稿で扱った内容の案内は、答えの型を先に作っておけば代行側でも返せます。一方、在庫の有無、見積もりの金額、不具合やお叱りの連絡は、社内でなければ答えられません。この二段を決めずに「コメント対応も込みで」とだけ書くと、判断のいる連絡が届いた日に、誰も返せないまま数日が過ぎます。
決めておくのは、返してよい範囲の一覧、社内へ渡すときの連絡先と手段、そして何時間以内に渡すか、の三つです。当社の場合、コメントとメッセージの一次対応は運用管理の中の一項目という扱いで、制作の点数とは別に選んでいただく形になります。
月に何本出すかを、金額より先に決めます
本数が決まらないうちは、体制も金額も決まりません。ショート動画は、一本の出来がそのまま結果になる作り方ではないためです。何本か出して、反応の出た型を残し、出なかった型を止めていく進め方になります。判断に足りるだけの本数がないと、良かったのか悪かったのかを決められません。
本数を決めるときの上限は、編集にかけられる時間ではなく、素材が出てくる量です。撮影が月に一回しかない会社が、毎週三本の新しい動画を出し続けることはできません。過去の投稿素材の切り直しや、既にある写真の活用で埋められる分もありますが、それにも限りがあります。
最初に決めるのは「月に何本出すか」と「その素材はいつ誰が撮るか」の二つです。この二つが決まると、制作の点数が決まり、投稿の作業量が決まり、見積もりの形が決まります。逆の順番で月額から決めると、素材が尽きた月に本数だけが残ります。
契約前に決めておく項目
契約書と見積書を交わす前に、次の項目を文書で決めておくと、後の作業が滞りません。
- アカウントの持ち主と権限。運用代行側にどの権限を渡し、契約が終わったときにどう戻すか
- 投稿前の最終確認を誰が行い、何営業日以内に返すか
- 修正の回数と、その回数を超えたときの扱い
- 月に見る数字を何にするか。三つのSNSに出す場合、どこの数字をまとめるか
- 契約が終わったときに手元へ残るもの。編集前の素材、書き出し済みの動画、投稿の記録
特に最後の項目は、始めるときに話が出にくく、終わるときにもめやすい部分です。編集前の素材が代行側にしか残っていないと、次の会社に頼み直すときに撮影からやり直しになります。
まず、直近三か月に納品された動画のうち、実際に投稿されたのが何本かを数えてみてください。作った数と出した数が離れているなら、足りていないのは制作の力ではなく、投稿までを誰が担うかの取り決めです。