「一年やってみましたが、うちはインスタでは集客できないという結論になりました」。運用の相談を受ける中で、こう切り出されることがあります。話を聞いていくと、その結論自体が間違っているわけではない場合もあります。ただ、結論を出すための材料がそろっていない状態で「できない」と決めているケースのほうが、私たちが受託の現場で見てきた限りでは多いです。
この記事では、原因の探し方ではなく、判断の順番を整理します。インスタで集客できないと感じたときに、まず確認したいのは打ち手ではありません。今の状態が「できない」と結論づけられる状態なのかどうかです。確認する順番は、期間と母数、打ち手の切り分け、受け皿側の詰まり、相性の見極め、そして次に何を確かめるかの決め方、の五つです。
「できない」には二つの意味が混ざっている
相談の場で「集客できない」と言われるとき、実際には二つの異なる状態が同じ言葉で表現されています。一つは、投稿は届いているのに、その先の問い合わせや来店に結びついていない状態です。もう一つは、そもそも投稿が人に届いておらず、届いていないから何も起きていない状態です。
この二つは、見えている結果が同じでも、やるべきことがまったく違います。前者は、投稿とその先をつなぐ部分の問題です。後者は、投稿が表示される段階の問題です。前者の状態で表示回数を増やそうとしても、増えた分だけ同じところで止まります。後者の状態で問い合わせまでの道すじを作り込んでも、そこまで人が到達しません。
自分のアカウントがどちらなのかは、インサイトのリーチとプロフィールアクセスを並べて見れば判断できます。リーチが一定量あってプロフィールアクセスがほとんど動いていなければ前者、リーチそのものが少なければ後者です。どちらの状態にいるかを決めないまま打ち手を探し始めると、関係のない改善に時間を使うことになります。
この切り分けを飛ばしてしまう理由は、はっきりしています。相談の段階で担当者の手元にあるのは、たいてい「フォロワーが増えない」「問い合わせが来ない」という最終的な結果だけだからです。結果だけを見ていると、途中のどこで止まっているかは見えません。まず途中の数字を並べる作業を挟むかどうかで、その後の数ヶ月の使い方が変わります。
期間と母数が足りていないだけの場合がある
「三ヶ月やったが成果が出ない」という相談は多く受けます。ただ、その三ヶ月に何本投稿したかを聞くと、数本しか出ていないことがあります。期間の長さと、投稿の本数は別の話です。判断材料になるのは、経過した月数ではなく、届いた回数と反応した人の数です。
投稿の本数が少ないうちは、一本ごとの結果のばらつきが大きく出ます。たまたま伸びた投稿があれば全体が良く見えますし、たまたま伸びなかった投稿が続けば全体が悪く見えます。この段階で平均を出しても、次の判断に使える数字にはなりません。本数が積み上がって、良かった投稿と悪かった投稿の傾向が言葉で説明できるようになってから、はじめて比較ができます。
もう一つ確認したいのは、比較の対象があるかどうかです。自社の数字だけを見ていると、それが良いのか悪いのか判断できません。自社の過去の数字と比べる、投稿の型ごとに分けて比べる、といった比較の軸を決めておかないと、「なんとなく伸びていない気がする」という感覚のまま結論に進んでしまいます。
打ち手をまとめて変えると、原因が分からなくなる
成果が出ないと感じ始めたとき、投稿の時間帯を変え、画像のデザインを変え、ハッシュタグを入れ替え、投稿の本数を増やす、といった変更を一度に行ってしまう例をよく見ます。気持ちとしては理解できます。うまくいっていないものを、少しずつ直す余裕がない状況です。
ただ、まとめて変えると、数字が動いても動かなくても、原因を特定できません。数字が上がった場合は何が理由か分からないため再現できず、数字が下がった場合はどの変更を戻せばよいか分からなくなります。結果として、変更のたびに手応えのない改善を繰り返すことになり、その状態が続くと「何をやっても集客できない」という感覚だけが残ります。
変更するときは、一度に動かす要素を一つに絞ります。そして、その要素を変えた投稿を何本か出してから、変える前の投稿と比べます。一本だけで判断しないことも大切です。この進め方は時間がかかるように見えますが、まとめて変えて原因が分からなくなる進め方より、結果的に早く答えにたどり着きます。
インスタの外側で止まっていないかを確認する
プロフィールアクセスは動いていて、リンクもクリックされているのに問い合わせが来ない、という相談を受けたことがあります。このとき、詰まっていたのはインスタ側ではなく、リンク先のページでした。スマートフォンで開いたときにフォームが操作しにくく、入力の途中で離脱していたことが後から分かりました。
インスタで集客できないと感じたとき、原因をインスタの中だけで探すと、この種の詰まりは見つかりません。確認したいのは、リンク先が投稿の内容と対応しているか、リンク先でやってほしい行動が一つに絞られているか、スマートフォンでの表示に問題がないか、といった点です。投稿を見た人はほぼ全員がスマートフォンから来ますが、担当者はパソコンで確認していることが多く、そこにずれが生まれます。
問い合わせの受け口が電話のみ、営業時間内のみ、という状態も見直す対象です。投稿を見て興味を持つ時間帯と、問い合わせができる時間帯が合っていなければ、興味は行動になる前に消えます。
相性が合わない場合の見極めと、その後の決め方
ここまで確認したうえで、それでも成果が出ない場合はあります。扱っている商材が、写真や動画で価値を伝えにくいもの、購入までの検討期間が非常に長いもの、対象となる相手が限られていて、そもそもインスタを使っていない層である場合です。この場合、投稿の作り方を変えても状況は大きく変わりません。
相性が合わないと判断したときに、いきなりアカウントを閉じる必要はありません。集客の主な経路を別の手段に移し、インスタは既存のお客様との接点や、会社の様子を伝える場として本数を落として続ける、という決め方もあります。実際、集客の期待値を下げてから、担当者の負担が減って更新が安定した例を見てきました。
判断のために決めておきたいのは、いつ、何を見て決めるかです。あと三ヶ月続けるなら、その三ヶ月で何本投稿し、どの数字がどうなっていたら続けるのかを、始める前に書き出しておきます。この基準がないまま続けると、成果が出ないまま期間だけが延び、担当者の疲れだけが積み上がります。
まずは手元のインサイトを開いて、直近の投稿のリーチとプロフィールアクセスを並べて書き出してください。この記事の最初に挙げた二つの状態のどちらにいるかが分かれば、次に確認する場所が決まります。