「ショート動画1本、いくらでできますか」。制作会社にはこの質問がそのまま届くことがよくあります。答えに困るのは、金額を出し渋っているからではありません。同じ「ショート動画1本」でも、編集だけを頼むのか、企画から丸ごと頼むのかで、依頼する作業の量がまったく違うためです。ショート動画の外注費用は、相場という一つの数字では決まりません。何を外に出し、何を自社に残すかという範囲によって決まります。この記事では、外注範囲のパターンごとに費用がどう変わるか、単発の発注と月額で量産する契約の違い、「1本あたりの単価」で比較するときに起きやすい誤解、見積もりを受け取ったときに確認しておきたい項目を、制作会社の中の視点で整理します。一般的な相場の数字は扱いません。範囲によって費用が変わる構造を扱い、後半で参考として当社の実額を並べます。

外注する範囲は四段階に分かれる

ショート動画の外注は、大きく四つの範囲に分かれます。範囲が広がるほど、制作会社側が持つ工程が増え、対価も増えていきます。

  • 編集のみ:動画や写真の素材は依頼主側で用意し、制作会社はカット編集・テロップ・BGMの追加・書き出しを担当する範囲です。企画や出演は依頼主側に残ります。
  • 撮影+編集:構成に沿った撮影から担当します。出演者やロケーションの手配が範囲に含まれる場合と、依頼主側が手配して撮影のみ立ち会う場合があります。
  • 企画から丸ごと:構成案や台本づくりから撮影・編集までを一括で担当します。依頼主は方向性の確認と、必要であれば商品や情報の提供だけで進められます。
  • 投稿・分析まで:投稿作業や投稿文の作成、投稿後の数字の集計・レポートまでを含みます。運用の一部を任せる契約に近づきます。

範囲が広がるほど費用が増えるのは直感通りですが、増え方は一律ではありません。どの工程を足すかによって、乗ってくる対価の重さが違います。

SNS運用の基礎を4回のメールにまとめています
この記事で触れた指標の見方や、外注先の選び方をまとめた資料を無料で送ります。
講座の内容を見る

範囲が増えるごとに何の対価が乗るか

同じ「範囲を一段広げる」でも、足す工程によって性質が違います。

撮影を足すと、日程調整・機材・移動・出演者やロケーションの手配にかかる対価が乗ります。撮影当日の拘束時間が長くなるほど、この部分は重くなります。

企画を足すと、構成案を練る時間と、採用に至るまでの修正のやり取りが乗ります。ここは本数に比例しにくい部分で、撮影や編集のように「作業している時間」が目に見えにくいのが特徴です。

投稿・分析まで足すと、リールやTikTokなど投稿先ごとの仕様(尺、縦横比、投稿文の文字数)に合わせる作業と、公開後も数字を追い続ける継続的な稼働が乗ります。

受託の現場で見ていると、依頼側が費用を聞くとき、企画にかかる時間を実際より軽く見積もっていることがあります。撮影や編集は成果物や作業風景が見えるため納得されやすい一方、企画は打ち合わせと資料づくりが中心で、外から工数が見えにくいためです。範囲に企画を含めるかどうかは、費用の見え方に対して思っている以上に影響します。

単発発注と月額の継続量産で何が違うか

同じ範囲を頼む場合でも、単発で発注するのか、月額で継続量産するのかで費用の性質が変わります。

単発は、依頼のたびに企画をゼロから立ち上げます。方向性のすり合わせや確認の往復が毎回発生するため、1本目から重い工程を通ることになります。継続量産は、過去に反応の良かった型を土台にできるので、本数を重ねるほど1本あたりの企画時間が短くなっていく傾向があります。

月額の契約は、稼働の枠をあらかじめ確保する形が一般的です。依頼が少ない月でも枠の対価は発生しますが、急な追加や差し替えにも対応しやすくなります。単発は制作会社側の空き状況に依存するため、繁忙期に依頼すると納期が伸びやすくなります。

事務的な手間の乗り方も違います。単発は1本ごとに見積もり・検収・請求が発生するため、本数が増えるほどその分の手間が費用に乗ります。継続量産はまとめて精算するため、この部分が本数あたりでは薄まります。

継続で量産している案件ほど、フィードバックの型が固まっていくのも受託の現場でよく見る変化です。「冒頭2秒のテンポを詰める」といった短い言葉で意図が通じるようになり、修正の往復そのものが減っていきます。単発の依頼にはこの土台がないため、毎回ゼロから意図をすり合わせる時間が必要になります。

「1本あたりの単価」で比較する落とし穴

総額を本数で割った「1本あたりの単価」は、比較の物差しとしてよく使われますが、扱いを誤ると判断を誤ります。

まず、範囲が違う会社の単価をそのまま並べると、比較になりません。編集のみの単価と、企画から丸ごとの単価を「高い・安い」で並べると、含まれる工程の数が違うため、差の理由が範囲なのか単価そのものなのかが分からなくなります。

次に、量産案件の単価には、型を作る立ち上げの回と、型に沿って作る継続の回が混ざっていることがあります。立ち上げの本数を含めて全体を割ると単価は高めに出ますし、継続分だけを切り出すと単価は下がります。この内訳を確認しないまま他社の単価と比べると、実態とずれた比較になります。

単価が下がったように見えても、修正回数や尺、投稿代行の有無が範囲から削られていることもあります。単価の数字だけでなく、範囲が同じままかどうかを確認する必要があります。

範囲と本数が単価にどう出るか、当社の料金を例にします

ここまで書いた「範囲」と「本数」が実際の単価にどう出るのか、当社の料金表からショート動画に関わる部分を抜き出します(2026年8月時点・税別)。相場の一般的な水準を示すものではなく、範囲の違いが単価にどう現れるかの一例として見てください。

  • リール1本(素材ご支給・編集のみ): 22,000円。カット・テロップ・BGM・書き出しまで
  • リール1本(企画・絵コンテから): 32,000円
  • ストーリーズ1本: 4,000円
  • 3ヶ月以上の月額プランでは、月4〜7点で単価が15%、月8点以上で25%下がる
  • 修正は初校から2回まで含み、3回目以降は別途

同じ「リール1本」でも、企画を含むかどうかで1万円の差がある構成にしているのは、本文で書いたとおり、企画の工数が外から見えにくく、範囲の認識がずれやすいためです。単価が月の本数で下がるのは、継続量産で型の再利用が進み、1本あたりの企画時間が実際に短くなるためです。

見積書を読むときは、制作そのものの費用とは別に、ディレクション費・進行管理費の項目も見てください。ここは連絡や確認のやり取りにかかる人手と時間の費用で、制作会社が進行をどう回しているかによって重さが変わります。安い見積もりを受け取ったときは、制作の工程が削られて安いのか、進行管理の部分が軽くて安いのかを、この項目で確かめられます。

見積もりで確認しておきたい項目

金額の高い安いを判断する前に、次の項目がどこまで含まれているかを確認してください。

確認項目 何を確認するか
尺と本数 1本あたりの尺(秒数)と、月あたり・案件あたりの本数
企画の範囲 構成案を何本出すか、採用されなかった案の扱い
撮影の有無 撮影が範囲に入るか、出演者・ロケーションの手配は誰が行うか
修正回数 編集後の修正が何回まで含まれるか、超えた場合の扱い
音源・素材の権利 BGMやフォントの利用範囲、広告など他の場所での利用が可能か
投稿・分析 投稿作業が範囲に入るか、投稿後の数字を追う頻度

空欄のまま契約すると、あとから「これは範囲外なので追加費用です」という食い違いが起きやすくなります。特に音源・素材の権利は、広告への転用を考えていない段階では見落とされがちですが、後から使い回そうとしたときに初めて範囲外だと分かるケースがあります。

見積もりを受け取ったら、金額の欄より先に、この表の項目がどこまで含まれているかを確認してください。含まれていない項目は、外注の範囲から漏れて自社の作業として残ります。