「保存数が伸びているので、この投稿は当たりです」。SNS担当者の報告でよく聞くフレーズです。ただし、保存数の絶対値だけを見ていると、投稿の本当の強さを見誤ることがあります。フォロワー数が多いアカウントは、内容にかかわらず保存数も大きくなりやすいためです。見るべきは保存の絶対数ではなく、保存率です。
インスタの保存率に、業種平均のような目安を当てはめて一喜一憂することには意味がありません。理由は二つあります。保存率は分母の取り方で数字が何倍も変わること、そして出回っている業種平均のほとんどが分母を書いていないことです。使える目安は、自分のアカウントの過去の投稿を並べたところからしか出てきません。
インスタの保存率の計算式と、分母の3つの取り方
保存率は、保存数をある基準となる数で割って100を掛けた数字です。
保存率(%) = 保存数 ÷ 分母 × 100
この分母には、フォロワー数・リーチ・インプレッションの3つの取り方があり、これはエンゲージメント率(投稿を見た人のうち、いいねなどの反応をした割合)の計算式と同じ構造です。フォロワー数を分母にすると、アカウント規模に対する保存の割合が分かります。リーチを分母にすると、投稿を見た人のうちどれだけが保存したかが分かります。インプレッションを分母にすると、表示回数に対する割合になるため、リーチを分母にした場合より数字は小さく出やすくなります。
保存率に関しては、リーチを分母にする考え方が実務では使われやすい方法です。フォロワー以外にも表示される投稿が増えている状況では、フォロワー数を分母にすると、投稿そのものの力よりもアカウントの規模が数字に影響しやすくなります。リーチを分母にすれば、実際に見た人のうちどれだけが保存という行動を取ったかを、より直接的に反映できます。どの分母を使うにしても、同じ分母を使い続けることが、比較する上での前提になります。ツールによって初期設定の分母が異なる場合もあるため、社内で使っている分析ツールがどの分母を採用しているかも、あわせて確認しておくと安心です。
なぜ保存が重視されるのか
保存は、いいねよりも意図のはっきりした行動です。いいねはその場での反応で完結しますが、保存は「あとでもう一度見返したい」という判断が伴います。情報としての価値を利用者自身が認めた結果が、保存という行動に表れます。
Instagram側も、保存やシェアを、投稿の質を示す重要な反応の一つとして扱っていることを公開しています。いいねの数だけでなく、保存やシェアがどれだけ集まっているかが、その投稿を他の利用者にも表示するかどうかの判断材料になっています。保存数を増やすことは、目先の反応だけでなく、投稿が広がる範囲にも関わってきます。
社内での評価という面でも、保存は説明しやすい指標です。いいねの数は投稿の見た目や雰囲気に左右されやすい一方、保存は内容そのものへの評価に近いため、次にどんな投稿を作るべきかという議論につなげやすくなります。だからこそ、保存という行動が起きやすい投稿の作り方を理解しておく価値があります。
保存率の目安を、他社比較では決められない
「インスタの保存率は何%あればいいか」という質問はよく受けますが、この問いに一般的な正解はありません。保存率の数字は、分母をフォロワー数・リーチ・インプレッションのどれにするかで大きく変わります。他社の数字と比べる前に、そもそも同じ分母で計算されているかを確認する必要があります。
さらに、フォロワーの層、投稿の形式(フィード写真・カルーセル・リール)、業種によっても、保存されやすさの前提は変わります。ノウハウ系のカルーセル投稿と、雰囲気を伝える単体写真の投稿とでは、保存という行動が起きる理由そのものが違います。ネット上には業種平均をうたう数字が出回っていることがありますが、算出方法や調査対象が明示されていないものも多く、自社の状況に当てはめられるとは限りません。目安を他社比較で語ろうとすると、条件の違いに埋もれて、結局は参考にならない数字になりがちです。数字そのものより、その数字がどう計算されたかを確認する習慣の方が、長い目で見ると役に立ちます。
保存される投稿に共通する性質
業種を横断して見たとき、保存されやすい投稿にはいくつかの共通する性質があります。
- あとで見返す前提の情報がまとまっている:手順、チェックリスト、比較の一覧など、その場で読み切るより保存して参照したくなる情報量です。
- 1枚で完結せず、複数枚で情報を構成している:カルーセル形式は、複数の情報を順序立てて伝えられるため、保存して見返す動機と相性が良い形式です。
- 保存しないと再度たどり着きにくい情報である:検索してもすぐには出てこない、その投稿ならではの情報がある場合、保存という行動につながりやすくなります。
これらはあくまで一般的な傾向であり、すべてのアカウントに同じように当てはまるとは限りません。業種やフォロワー層によって、何が「見返したい情報」にあたるかは変わります。BtoCの店舗アカウントであれば商品の使い方や比較情報が保存されやすく、BtoBのアカウントであれば業務に使えるチェックリストや資料が保存されやすいというように、保存の対象になる情報の種類そのものが業種によって異なります。自分のアカウントでどの性質が保存につながっているかは、次の方法で確認します。
インスタの保存数はどこで見るか。保存率との使い分け
インスタの保存数は、その投稿が保存された件数そのものです。保存率は、その件数を届いた人数などで割った割合です。二つは別の数字で、どちらを見るべきかは場面によって変わります。
保存数は、投稿ごとのインサイトの画面で確認できます。投稿を開いてインサイトを表示すると、いいねやコメントと並んで保存の件数が出ます。アカウント全体の保存数を期間で見たい場合は、プロフィールのインサイトから期間を指定して、投稿の反応をまとめた画面を開きます。表示される項目の名前と並び順はアプリの更新で変わることがあるため、見当たらないときは投稿単体のインサイトから確認してください。
インサイトが出てこない場合は、アカウントの種類を確認してください。個人用のアカウントでは投稿ごとの保存数が表示されず、プロフェッショナルアカウント(ビジネスまたはクリエイター)に切り替えて初めて出てきます。切り替える前の期間の数字はさかのぼって見られないため、これから数字を追う予定があるなら先に切り替えておいてください。
見る場面の分け方は単純です。今月の投稿全体でどれだけ保存を集めたかを知りたいときは、保存数の合計を見ます。投稿ごとの出来を比べたいときは、保存率を見ます。保存数だけで投稿を比べると、たくさんの人に届いた投稿が自動的に有利になり、届いた人数の少ない投稿の中にある良い投稿を見落とします。逆に、保存率だけを見ていると、届いた人数が極端に少ない投稿の割合が高く出て、実際にはほとんど保存されていない投稿を高く評価してしまいます。
受託の現場では、保存数が伸びた月にアカウントの調子が良くなったと判断され、後から投稿数が増えていただけだったと分かる場面があります。保存数は投稿の本数に連動して増えるため、月ごとに比べるなら投稿1本あたりで揃えてください。
自分の過去と比べる方法
保存率を活用する最も確実な方法は、他社と比べることではありません。自分のアカウントの過去の投稿と比べることです。同じ分母の定義で、直近数ヶ月分の投稿の保存率を並べ、数字が高かった投稿に共通する構成を洗い出します。テーマ、見出しの付け方、情報量、投稿の形式のうち、どの要素が保存率と関係していそうかを一つずつ確認していくと、次に作る投稿の型が見えてきます。
受託で保存率を分析していると、フィード写真とカルーセルを同じ基準で比べて、カルーセルの保存率だけが低く見えると誤解される場面に立ち会うことがあります。実際には、投稿の形式によって保存という行動が起きやすい情報量そのものが違うだけで、投稿の出来不出来の差ではありません。形式が違う投稿を横並びで比べるときは、この前提の違いを踏まえて見る必要があります。
まず、直近3ヶ月の投稿を、同じ分母で保存率を計算し直してください。そのうえで保存率が高かった投稿に共通する構成を書き出し、次の投稿の型に反映してください。