「TikTokは、社内に撮れる人がいないんです」。依頼先を探している担当者から、そう相談されることがあります。TikTokの運用代行(自社に代わってアカウントの企画や撮影、投稿を担う仕事)を個人に頼むか会社に頼むかは、好みで決まる話ではありません。分かれ目は三つです。撮影と出演を誰が担うのか、投稿を出す速さをどこまで求めるのか、担当者が動けなくなったときに代わりが必要か。この三つを先に決めておくと、届いた提案を同じ土俵で比べられるようになります。

個人と会社で差が出るのは、撮影を含むかどうか

インスタグラムの静止画中心の運用と違って、TikTokは動く素材がないと始まりません。撮影の日程を組み、出演する人を確保し、収録に立ち会う。この一連の作業が毎月発生します。個人に頼むか会社に頼むかで最も大きく変わるのは、この部分を誰が引き受けるかです。

観点 個人に頼む場合 会社に頼む場合
撮影 自社で撮った素材を渡し、編集を任せる形が多い 撮影から任せられることが多い
出演する人 自社で用意する前提になりやすい 外部の出演者を立てられる場合がある
投稿を出す速さ 一人で判断して出せるため速い 社内の確認手順が入る分、間があきやすい
代わりの有無 基本的に代わりの人がいない 他のメンバーが引き継げる
契約と請求 個人事業主との契約になる 法人との契約になる
アカウントの権限管理 本人との合意がすべてになる 社内の規程と手順がある

表の左右は優劣ではなく、体制の違いです。自社にとって必要な行がどこかを見てください。撮影を自社で完結できる会社であれば、右側の強みの多くは使わないまま費用に乗ってきます。逆に撮影から任せたい会社が個人に頼むと、素材を用意する作業が自社に残り続けます。

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個人に頼むのが噛み合う場面

社内に出演できる人がいて、スマートフォンで撮った素材を毎週渡せる状態にあるなら、個人への依頼が噛み合います。任せるのは、素材の選定と編集、投稿文の作成、投稿の実行あたりに絞られます。

特定の人の言葉選びや間の取り方を信頼していて、その人にアカウントの雰囲気ごと任せたい場合も、個人への依頼が向いています。やり取りの相手が一人なので、修正の依頼から反映までが短くなります。TikTokは反応が読みにくく、出してみないと分からない部分が残ります。方向性をまだ固めきれていない立ち上げの時期に、身軽に試行錯誤したい会社とは相性が良い傾向があります。

一方で、稼働が一人に集中する構造は変わりません。その人が体調を崩したときや、他の仕事が重なったときに、投稿が止まる可能性は織り込んでおいてください。撮影の立ち会いまで頼んでいる場合、代わりが立たないと収録そのものが延期になります。

会社に頼むのが噛み合う場面

撮影から任せたい場合、会社への依頼が現実的な選択になります。カメラを持つ人、進行を取りまとめる人、編集する人を毎回そろえる必要があるためです。社員ではなく外部の出演者を立てたい場合も同様で、人選と交渉、出演の契約までを一括で引き受けられる相手が必要になります。

同じ素材をTikTok以外にも展開したい場合も、会社に頼む理由になります。一度の撮影で撮った映像を、インスタグラムのリールやYouTubeのショート動画にも回すには、それぞれの長さと画面の作りに合わせた編集が必要です。この作業をまとめて一社に持たせておくと、素材の管理が一本化されます。

社内の稟議や取引先の登録の都合で、法人としての契約書と請求書が必要な場合も、会社への依頼が前提になります。報告を上長や他部署に共有する必要があり、報告の形式をそろえたい場合も同じです。

受託の現場では、TikTokだけを別の相手に頼んでいた会社から、依頼先を一本化したいという相談を受けることがあります。理由は品質への不満ではなく、素材の受け渡しが二重になって、社内の担当者の手間がかえって増えたためでした。依頼先を分けるほど、社内側で調整する仕事が残ります。

どちらに頼む場合も、先に決めておく三つのこと

依頼先を比べる前に、自社で決めておく必要がある項目が三つあります。決めないまま相談すると、各社の提案が別々の前提で組まれて、比べられなくなります。

一つ目は、誰が画面に出るかです。社員が出るのか、外部の出演者を立てるのか、手元や商品だけを映して顔は出さないのか。ここで見積もりの前提が大きく変わります。社員が出る場合は、退職したときにその人が映った投稿をどう扱うかまで、社内で話しておいてください。

二つ目は、音源と映り込みの扱いです。TikTokの中で使える音源でも、広告として配信する段になると使えない場合があります。撮影場所に他社の商品や看板が映り込むときの判断基準も、先に決めておくと現場で止まりません。

三つ目は、アカウントの権限をどう渡すかです。ログイン情報をそのまま渡す方法と、権限を付与して自社が管理者として残る方法があります。後者を選べるなら、契約が終わったときにアカウントを取り戻す作業が軽くなります。

契約前に書面に残しておきたい項目

個人か会社かに関わらず、次の項目は書面に残してください。月に出す本数と修正の回数、撮影の回数と一回あたりの拘束時間、コメント欄への返信をどこまで任せるか、投稿に誤りが見つかったときの連絡先、契約が終わったときの素材とデータの返却方法です。

撮影の回数と拘束時間は、特に食い違いが起きやすい項目です。受託の現場では、月に一度の撮影で何本分を撮るかという認識が発注側と受注側でずれたまま進み、初回の収録日に予定が押した例がありました。撮影は人が集まる作業なので、日程を取り直すだけで数週間が飛びます。書面に本数と時間を書いておくと、この種の食い違いは起きにくくなります。

コメント欄の扱いも決めておいてください。TikTokは投稿後にコメントが集まりやすく、返信を誰がどこまで行うかを決めていないと、放置か、あるいは担当者が業務時間外に対応する状態になります。返信する時間帯と、判断に迷う内容が来たときの相談先まで決めておくと、運用が安定します。

依頼先を探し始める前に、まず社内で三つのことを紙に書き出してみてください。撮影を自社で行えるか、画面に出る人を確保できるか、投稿が一週間止まったときに困るか。この三つの答えが出れば、個人と会社のどちらに声をかけるべきかは自然に絞れます。